付き合い始めて一週間です。毎日がわくわくでふわふわです。彼は優しいです。いつも温かく接してくれます。

「でさ、君島が」
「あはは!!そんなんやってたんだ?」
「あいつ、ほんとおもしれーよな」
「うんうん、あいつはすごい」
「だよな」

今日は電車で来たから、部活帰りに巣山と並んで駅まで歩く。巣山は自転車あるから先に行って良いよって言ったけど、俺のわがままだから気にしないでって返された。

君島の話が終わった後、少しの沈黙。この沈黙が全く重くないのは…きっと相手が大好きな巣山なんだからだろう。少しだけ優越感。
そんなこと考えていたら左手に温もりを感じた。少し固い感触。

「…巣山」

ぎゅっと繋がれた手と巣山を交互に見やる。ほんの少し赤くなった顔。温かい手。やっぱ好きだと感じて握り返した。

「栄口ー!!!」

ばーん!という音と共に、俺と巣山の間を駆け抜けていく人影。よく見れば水谷で。

「み、水谷!!」
「二人ラブラブ帰ろうなんてさせないんだからね!!」
「はー、お前な」

巣山は軽く頭を抱えて苦笑った。

「そーだそーだ」
「わ、阿部まで来たよ」
「んだよ、皆いっぞ」
「み、皆!?」

ぞろぞろと後ろから野球部が集まってくる。西広や沖まで…嘘でしょ!?

「俺達がほっとくわけねーだろ」
「…阿部はやっぱりヤナヤツだ」
「はあ!?」

俺がため息を吐くと、楽しそうに田島が言った。

「俺はまだ見てようって言ったんだけどさー水谷が行っちゃったから」
「見てよう…って、なんで」
「このままいけばチューしそうだったし!」
「!?」

ぼんっと音を立てそうなくらい自分の顔が真っ赤になったと分かる。いきなり直球ぶっこんでくるとかもう。

「まだしねーだろ」

泉がさらりと会話に入ってくる。

「そーかー?」
「くっつくまで何ヵ月もぐだぐだやってたんだし、一週間で手ぇ繋いだのがびっくりだった」
「それもそうだな」

巣山意外とヘンタイだな!!

田島の言葉に巣山は顔を手で覆った。

「…ったく、お前らなあ」

離された手がもう一度しっかり繋がれる。ドキンと、胸が高鳴る。

「悪いけど、こいつ送ってくから」

ぐいっと引っ張られて荷台に乗せられる。巣山は俺の手を自分の腰に回させて「落ちんなよ」って言った。

「おい巣山ヒキョーだぞ!!」

後ろで水谷の声が聞こえた気がしたけど、それより心臓の音がうるさくてよく分からなかった。

「自分でしといてなんだけど…あんま、くっつかないで、ほしいかも」
「え」
「……すっげ恥ずかしい」

顔は見えなかったけど、背中越しに伝わってくる鼓動から巣山の気持ちが伝わってきた。

「…バカ」

それが嬉しくて、だから、背中に額をくっつけて、思い切りぎゅっとしてやった。



***
匿名様よりリクエスト「甘々巣栄とらーぜ」でした!
初々しい巣栄が書けて楽しかったです!!もどかしい二人が好きすぎて 笑


匿名様、素敵なありがとうございました!!
これからも宜しくお願いいたします*


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