※捏造クラスメイト多出
あと、皆成人済み設定
勝手に色々設定あります




「うーい」
「あ、君島おせーぞ!!」
「悪い悪い。練習長引いてさ」

君島がガラリと襖を開けて入ってきた瞬間、盛り上がった室内。やっぱ君島はいつまでも君島だよな。

「すごいよね君島くん。努力実って…プロなれたもんね」
「はは、サンキュ」
「お疲れ様」

そう言って委員長は君島のグラスにビールを注いだ。

「いい女になったよな委員長。それに司法試験受かったんだろ?難関突破おめでと」
「ありがと」
「綺麗になったし…って、え!?指輪!?」

君島は委員長の手を握って大声で叫んだ。素面なのにこいつはいつも騒がしい。

「…うん」
「え、まさか」
「俺だ」
「……!!」

君島は名乗り出た指輪の相手に絶句した。

「青木…嘘だろ…卒業式に何かいい感じじゃねあははとかからかってたら…マジかよ…」
「仕事も恋愛も順調だな」
「そうなんだよ!最近会社いい感じに波に乗ってきてさ」
「お前じゃねえよ山口」
「皆様、結婚式の時はありがとうございました」

深々と頭を下げる山口に「浮気すんなよー」とか「別れろー」とか様々な声が飛び交った。

「てかあいつらまだいねえの?」

はっとしたように辺りを見渡す君島に「二人とも仕事長引いて遅れるってさ」と返事をした。

「栄口今受験生持ってんだろ?じゃあ大変だよな」
「巣山もミーティング長引くらしい」
「病院だっけ?なんか皆ちゃんと働いているよなー」

君島は嬉しそうに笑った。俺と、何の気もなしにグラスをカツンと合わせる。泡が無くなったビールが少しだけ揺れた。

「一年一組の思い出って言えば…あいつらのことが真っ先に浮かぶのは…俺だけじゃないよな」

ぐいっと一杯空にして、君島は苦笑いながら言った。俺は二杯目をつぎたした。

「だってさ、結局俺と工藤なんか三年間あいつらと同じクラスだったけど…あんな色々盛り上がったの一組が一番だったぜ」
「楽しかったよな」

このクラスで酒を飲むのは初めてではない。でもそこには酒の力だけではない、感慨深い皆の想いが交錯していた。

「巣山、栄口のことずいぶん甘やかしてたよな」
「うんうん。俺らには厳しかったのに」
「それがあいつらだから…しょうがないんじゃん」

俺の言葉に、皆は懐かしそうに頷いた。

「私、栄口くんのこと好きだったでしょ?」

カルーアミルクの氷をカラン、といわせながら元演劇部の看板女優は言った。

「…優しくて、気遣いできて。こんな人いるんだって、同級生で、野球部で、こんな人いるんだって思ったの」
「そういやヒロイン、栄口にぞっこんだったよな」
「うん。でもさ、巣山くんには弱音とか甘えとか見せるの。普段は色々遠慮してたり…それがあの二人の間にはなくて。たまにはさ、あったかもしれないけど…」
「…」
「それが悔しくて。巣山くんも大人びてて優しいでしょ?だからまた…悔しくなってさ」

ヒロインはカルーアミルクを飲み干して「すみませーん!カシオレください」と店員に頼んだ。俺もついでに梅酒を頼む。

「…あいつらにはあいつらの…葛藤とか、割り切りとか…あったんだろうな」

俺がそう溢すと、ヒロインは泣きそうな顔で頷いた。そして。

「お疲れー」
「遅れてごめん!!」
「やっと来たか主役!!」
「え!?俺主役じゃないでしょ」
「いいから早く座れって。色々話そうや」
「君島…酔ってる?」
「素面でもこいつはこんなんだろ」

巣山の淡々とした言葉に栄口はふっと笑った。こいつらも、変わらないようで確実に大人になっていっている。立ち止まらないもんなんだな。

「巣山お疲れ。こないだのMRIのミーティング?うちにもなんか話回ってきたわ」
「おう。なんかRTかり出された。PSどうよ。担当変わったんだろ?」
「まー、ぼちぼち」
「そっか、工藤も巣山と同じ病院だもんね。巣山の放射線技士も大変そうだけど…薬剤師も大変?」
「病院だから、規模でかいし…大変だけど、苦ではないかな」

君島は「巣山って何か難しいやつやってんだろ?」とけらけら笑いながら言った。巣山も曖昧に頷く。そしてビールをひとくち口にした。

「で、今何の話してたん」

巣山は、いつの間にか栄口が小皿に取り分けたサラダを口にしながら言った。こうやって話の流れを掴むのがうまい巣山は、やっぱモテるんだろうな。

「お前らの話だから、気にすんな。当人が来たんだから問題ない」
「まじか」

一つトーンが高い声で笑う。栄口も「俺らの話って何だよー」とか言いながらも、君島と楽しそうに笑い合っている。

「今、二人は一緒に住んでるんでしょ?」

女子の一人が言った。野球部は顔を見合わせて微笑む。こういう、熟年夫婦みたいな仕草が二人の仲を表している。幸せそうだ。

「うん、まあ」
「今度遊びに行きたいなあ」
「いいよ。結構近いしね」
「な」
「やった!じゃあ空いてる日後で教えてー」
「オッケ」

隠さないのも、二人はすごい。あくまで自然に、一緒にいる。俺はこいつらがあの頃と変わらない絆で結ばれていたことに安堵した。

「よかった」
「?何がだ、工藤?」
「…いや」

サッカー選手になった君島も、ピッチではあんなにかっこいいのにこの場では変わらない妙なノリで。病院でもまれている巣山も、学校で受験生相手に奮闘している教師になった栄口も、法廷で闘う委員長も…色んな場所で頑張る皆も。
それぞれの苦労はあるだろうけど、こうやって集まった時に高一の時と変わらずにいられるから。

「また、集まろうな」

梅酒を飲みながらそう言えば、ジョッキ片手に巣山は笑った。

「なあ栄口ーお前の生徒紹介しろよー」
「おま、それロリコンじゃねーかよ!」
「あはは、いいよ君島ー」
「え、まじで!?」
「おいおい栄口!!」
「大丈夫だよ山口。俺んとこ男子校だから。サッカー選手くるよって言えば皆盛り上がると思う」
「う、遠慮…しときます」

何か本当に、嬉しくなったんだ。

「大人に、なったよな」
「?…ああ」

未来を守るために、離れた方がいいんじゃないかと葛藤していた巣山の右手薬指に、栄口と同じ指輪がはめられていた。
隣の存在を守れるくらい、大人になった。その指輪がそのことを物語っている気がした。



***
百花様からリクエスト「一組で同窓会」でした。
すごく楽しかったです。野球部少し出番少ないですかね?笑
最後の指輪のくだりは…あえて右手に。左手はなんか二人らしくない気がして。個人的ですが。
医療人の会話としてちょっと用語ぶっこんでみました。

百花様!!
この度は発狂するくらい素敵なリクエストありがとうございました。一組スキーとしてはもう!皆を書けることが幸せでした。ありがとうございました。
これからも捏造一組共々よろしくお願いいたします。


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