※捏造一組多出



春になった。嬉しい。こわい。

「やんなるよなーまじで」
「もう一緒に登校すんのもなくなんのかね」
「そういうこと言うなよ工藤。寂しいだろ」

満開の桜が眩しい新しい季節が訪れ、離ればなれになる、皆。そして、新しく出逢う、皆。俺を含めてきっと、寂しさでいっぱいなんだと思う。実際の話、春休みにクラスの皆で遊んだ時はすごく楽しかった。


***


「委員長は、来年も委員長やんの?」
「どうだろう。生徒会入るつもりだし…まだ分からないな」
「君島こそやればいーじゃんよ」
「俺はやだよ!部活に専念できなくなんじゃん」
「お前サッカーやりに学校来てるようなもんだもんな」
「工藤の馬鹿!!そんなことないもん!!」

クラスの皆が、学校から比較的近い俺の家に泊まりにきた。クラス替えの一週間前のことである。

「お友達来たわよ」

母ちゃんがドアを開けて(ノックしてからっていつも言っているのに!!)、見慣れた二人が入ってくる。ロンTにジャージと、二人ともラフな格好だ。

「栄口君!!巣山君!!」
「部活お疲れー!!」
「遅れてごめんね」
「お邪魔します」

遅れて登場したのは野球部の二人だ。この二人を中心に、一年一組は仲良くやってこられた。こいつらは何をしたでもないんだけど…一組に欠かせない存在。

「まあまあ、堅苦しい挨拶は抜きにとりあえず飲みましょうや」
「はは、君島オヤジくせぇ」
「まあまあ一杯」
「ども」

ふざけながら巣山のコップにウーロンを注ぐ。お酒は飲まないよ!!未成年だもんね!!

「栄口くん、お疲れ様」

委員長が笑顔で栄口のコップにトクトクと飲み物を入れる。栄口も嬉しそうに「ありがとう」と返事をした。

「…」

野球部の二人は付き合っている。男同士なんだけど、そんなん関係なかった。こいつらにはこいつらの世界があって、たとえ一年一緒にいたクラスメイトの俺達にも、その関係に入ることはできなかった。
優しくて温かくて、不思議な二人だった。

「もうクラス替えか」
「…」
「…」

ぼんやりと、山口が呟いた。寂しい、と思う。多分今ここに来ている奴らもそう思っているはずだ。寂しい、クラス替え。

「…春は、別れの季節で…そして、出会いの季節だなんて。そんなの分かりきっているんだけどね」

委員長はふっと悲しそうに笑って言った。

「割りきれないこともあるよな」

こんなに一年が楽しかった。学祭も体育祭も球技大会も。みんなみんな一致団結して楽しめた。それはきっと、このメンバーだったから。

「クラス替わってもまた、こうやって集まろうね」

ウーロンを一口含んだ後、栄口は笑って言った。

「…おう」

ふざけ合って笑い合って。女子の一人が恋に悩んでいたら皆で相談し合ったり(山口の恋の悩み―もはやのろけには誰も耳を傾けなかったけど)、担任の誕生日にサプライズで泣かせたり(「お前らは、最高の生徒だああ!!」って叫んだのはまじびびった)。
色んなことが、あったなあ…

「君島、涙目」
「っ!!な、ば、馬鹿工藤!!ただのあくびだよ!!」
「眠いなら寝ろよ君島ー」
「眠い訳じゃねーよ!!お前が寝てろ青木!!」
「はあ!?」

俺らのやり取りを見て、栄口はクスクス笑っている。俺はそんな彼を見て口を開いた。

「栄口」
「ん?」

きょとんと首を傾げた栄口。俺は続ける。

「お前は…不安じゃねーの?」
「、え」
「巣山と、クラス離れるかもだろ」
「…うん」

彼は、自分の隣に座る坊主を見つめた。巣山も恋人を見つめ返す。いつもみたいな甘いだけの雰囲気は感じなかった。

「確かにさ、このクラス…大好きで」

栄口が、ゆっくり言葉を紡いでいく。

「巣山とだって、一緒にいられる時間減るわけだし、新しい環境…不安だよ。だけど」
「…」

巣山は何も言わずに言葉を待っていた。

「それだけじゃ、ないじゃんか」
「え?」
「クラス替わっても、友達だし、仲良くできるじゃん。この中の誰かとはきっと…同じクラスだし、お別れじゃないんだと思う。少し物理的な距離ができるだけで…うまく言えないけどさ」

辿々しく並べていく言葉は、心にゆっくりと滲みていく。皆が耳を傾けていた。

「大丈夫」
「え」

巣山が彼の頭を優しく撫でた。

「このクラスの絆は壊れない。大丈夫って、ことだろ?」

不安げな顔をしていた栄口に、ようやくほっとしたような笑みがこぼれた。

「うん」
「私もいける気がしてきた!!頑張ろうよ皆!!」
「何をだよ」
「クラス替え、前向きに迎えようってことでしょ」
「そうそう!委員長わかってる!」
「委員長だからね」

皆が笑った。もう悲しそうな顔をしている奴はいなかった。

「皆大丈夫だから、泣くなよ君島」
「うっせーよ工藤」
「俺は彼女と同じクラスになれるかもって希ぼ」
「はいはいはいはいそんなことはさせないよ山口さーん!!」

俺達は、大丈夫。


***


「何も物思いに耽ってんだ君島」
「いや、何かなあ…」
「早く発表見に行くぞ。午後から部活あんだよ」

工藤と一緒に渋々足を進める。掲示板の前には人だかり。そこに何とか加わって貼り紙を見る。

「…っと…一組から見てくか…」
「おう」
「えっと…あーいーうーおー…君島!!俺また一組!!」
「一組?ほんとだ…って、お前の下見てみろよ」
「は?何も落ちてねーぞ」
「紙の、お前の名前の、下だよ」
「…え、と…工藤!?お前の名前!!」

俺は工藤の顔を見て叫んだ。いつもクールなこいつだけど、何か口元が緩んでいるように見えた。

「あ、君島と工藤だ!!」

栄口と巣山がやってきた。

「おー野球部!!俺とこいつまた同じクラス!!」
「工藤と?えーいいな!!」
「俺らも見るか。昼休みそんな残ってないし」
「うん!」

二人も名前を探し始める。
それを俺と工藤は遠巻きで見ていた(邪魔になるからね)。

「お」

早く巣山と栄口が人だかりから出てきた。もう見つけたのか?

「サ行だから、一組の真ん中らへんから探し始めたら一発!!」
「また栄口と一組だったわ」
「え」
「お前らも一組?」
「え」
「え」

まさかの、まさかのまた同じクラス!!あの切なさを返してくれ!!

「君島!!」
「げ、山口」
「彼女と同じクラスだったよ!!二く」
「よかったよかったー俺らまた一組だなーじゃあな山口ー」

また、新しい出会いと…そんで、続いていく友情。どっちも大事にしたいと、桜の下で笑った。



***
さくらんぼ様よりリクエスト「クラス替えネタ一組」でした!!クラス替え寂しいですね。巣栄離れたらもう…うう…

さくらんぼ様!
捏造一組大好きなんてありがとうございます!総出演させてみました。楽しかったです。
クラス替えは仕方ないですけど…割りきれないとこありますよね。頑張ります。巣栄、頑張ります。
この度はリクエスト本当にありがとうございました(^O^)


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