ワンアウト1・2塁。点差は一点。安打が出れば同点…そして、逆転もあり得る。こんな状況で、三橋は一球ずつ丁寧に投げている。今日も四死球はない。相変わらずナイスコントロール。
「…」
センター前、ライトフライ、レフト前。で、今の状況。一点差だからここは切り抜けたい。
「ボーッ」
主審が告げる。今のは際どかったのにバッターよく見たな。カウント2-2か。振れよな。
ふい、と横を見るとセカンドにいる栄口もこっちを見ていた。
この笑顔を見るのは何度目だろう。見る度に癒されるんだよな。
三橋は阿部のサイン通りに投げているんだろうな。阿部のミットが動かない。ボール。
「おー!!バッチこい!!」
三塁近くで田島が叫ぶ。それに触発されて俺と栄口も叫んだ。三橋は驚いたように振り向いた。その後できゅっと顔を引き締めてバッターを見つめた。
「巣山っ」
セカンドから名前を呼ばれて振り向くと笑顔で頷く相棒。これは「転がったらゲッツー取ろう」のサイン…みたいなもの。いつだってゲッツー取りたいと思ってるけど、不思議とこの合図があった後は安心してできんだよな。栄口のこと信頼してるし。
「…」
きた!!
キン、という独特な金属音の後にショートへ打球が飛んできた。投げられた(多分カーブ)ボールは阿部の読み通りだったんだろうな。ショート真っ正面。6-4-3のゲッツーコース。
素早く打球をグラブに収めて二塁に着く栄口へ送球する。そしてボールは一塁の沖に投げられた。バッターはヘッスラしたけどアウト。
「よしゃ、ゲッツー!!」
栄口が笑顔でグラブを差し出してくる。ベンチへ走りながら俺のそれをぶつけた。
「栄口いい送球だったな」
「巣山も処理早かったね」
「…何回も練習しただろ」
ふっと目を細める。栄口は笑顔で頷いた。
「練習のこと本番でちゃんと発揮できるのはすごいと思うよ」
「ゲッツーってかっこいいもんな」
「じゃあ次は是非4-6-3で併殺いただこうかな」
「だな」
監督がベンチで拍手して迎えてくれた。俺らは笑い合った。
「いいリズムで交代だね!今の守りで作ったリズムを攻撃でも生かすんだよ!!練習試合だから、ミスを恐れず積極的にね!!」
「はい!!」という声でバラバラに散らばる。今回は…一番の泉からか…
「巣山」
「ん」
二番の栄口がまだベンチにいた。まだプレイしてないから大丈夫なんだけど。
「どしたん」
「…いいリズムで、帰ってくる」
ニコッと笑った栄口の、バッティンググローブを着けた手にそっと口付けた。
「っ巣山」
「いいリズムで回してくれよ」
栄口は顔を真っ赤にした後で嬉しそうに頷いた。
***
匿名様よりリクエスト「野球している巣栄」でした!
野球はすごく大好きなので試合展開考えるの楽しかったです。ありきたりな感じになってしまいましたが…二遊間の見せ場、併殺プレーを書けて嬉しかったです。
匿名様!
この度は素敵なリクエストありがとうございました!!
野球している二人はあんまり書いたこと…というか書いたことなかった気がするので新鮮で楽しかったです。
リクエストありがとうございました!!
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