捏造一組多出



「じゃあ二人一組になってくださーい」

ガヤガヤと騒がしくなる体育館。バレーのトス練習ってことでペアを作ることになった。
一組は皆仲良し(多分俺だけでなく皆が思っている)だからひとりぼっちが生まれることはない。俺ら偶数だからほら、簡単にペアができた。あれ、俺ひとりぼっちじゃん。なんで?

ひとりぼっちにぽかんとしていると、バコンとボールを頭に当てられた。何、仲間外れの後は完璧ないじめ!?

「何ぼけっとしてんだ君島」
「は」
「早く始めるぞ」

一人でぼけてみたけれど、なんとなく分かってた。コイツが傍に来てくれること。何も言わなくたって、俺のペアは工藤ってこと。何だかんだ、俺と工藤は隣にいつもいること。

「…おう」

俺はバリバリのサッカー部で、あいつはバスケ部。何かとお祭り好きで文系な俺とクールで理系なあいつ。何もかも逆だけど、なぜかそれが心地よくて。だからいつも一緒にいる。それは多分、あいつも一緒。

「工藤うまいな」
「いつもボール使ってるからな」

ちらりと横を見れば野球部が楽しそうにやっている。一組の団結はこいつらのおかげでもある気がする。俺と工藤の最初の会話も「あのさ、こいつらラブラブじゃね?」「そういうのは言わなくても皆が分かってんだ」だったもんな。

「俺は足のがやりやすいや」

工藤が綺麗に返してきたトスを、足でぽんっと蹴り上げた。工藤の取りやすい、いいポジションに上がった。ナイスアシスト俺。

「トス練だろ、手を使え手を」
「うーい」

工藤は、優しくトスを上げてくる。そういやこいつ、この間隣のクラスの子から呼び出されてたっけ。
冷やかしてやろうかと思っていたけど、なんだかそれができなかった。ただなぜか、工藤に彼女できんのかな、なんてぼんやり思った。

「君島ー」

隣にいた巣山が気がつけばすぐ傍にいた。

「お、ど、うした?」
「何キョドってんだよ」
「いや、別に…」
「四人で円陣パスやれだって。聞いてなかったのか?一緒やろうぜ」
「、おう」

体育の時にはしゃいでないの珍しいな、なんて巣山は笑っている。こいつは、栄口が女の子から呼び出されたらどう思うんだろ。

「いくよー」

栄口の声に反応してボールを待つ。
野球部の二人は幸せそうだ。一緒にいて、皆に認められて、壁をみんな越えていっている。すごいな。多分この二人だからこそ皆に愛されてるんだろうけど。

もし…

「君島!!いったぞー!」
「え」

俺の頭に勢いよくボールが降ってきた。終わった、俺の青春…



***



「大丈夫か?」

目を覚ますと天国かと思ったのに工藤がいた。あ、生きてんだ俺。

「お、う…っいたた」
「動くなって。たんこぶできてっから」
「悪い」

気を失った俺を、巣山と栄口と工藤の三人がかりで運んでくれたらしい。面目無い。

「なんでぼーっとしてたんだよ。お前の大好きな体育で、珍しい」
「…工藤のこと、考えてた」
「、は」

呆気に取られたような顔をする工藤。当たり前だよな、こんなん言われたって…

「いや冗談だけ……っ!?」

俺の額に工藤の唇が触れた。

「な」
「いいから寝とけ」
「…っ」
「まじないだ、まじない」
「そ、そんなんで治るわけねーだろ!」

「…だったら物欲しそうな顔、してんなよな」

ぺちん、と頭を軽く叩かれる。打った頭には少しじん、ときた。この野郎。

「そんな顔…!!」

工藤の頬は赤く染まっていた。多分俺も真っ赤だから、何も言えなかったんだけど。

「大人しくしてろよ」

"親友"をちょっとはみ出る関係になるのは、もう少し先の話。



END



***
あのさ“親友”より近いんじゃないのか俺ら。みたいな話をこの後します。
すごく楽しかったです!!笑
リクエストくださった方も「工藤×君島(笑)」ということだったのでもっとギャグにしようかと思いましたがなかなか初々しくなりました。


匿名様!
この度は素敵な(笑)リクエストありがとうございました!!
クール工藤とおちゃらけ君島を好いてくださって嬉しいです!!まだまだ一組量産していきますね。
ありがとうございました!!


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