「やっと、終わった…」

試験監督の先生が教室を出ていったと同時に、悲鳴に似た歓声が沸き起こった。

「あー、もうすっげしんどかったわ」
「お疲れ」

机に伏せながら言うと、後ろの工藤が言葉をくれた。さすが親友。

「ほんとお疲れ」

隣の栄口もぐったりしながら言った。野球部、赤点取ったらやばいらしいからな。まあ二人ならそんな問題もないだろうけど。

「栄口、今回めっちゃ頑張ったもんな」

栄口の後ろに座る巣山が、栄口の背中をぽんぽん叩きながら言った。

ようやく、一組に平安が訪れた。
テスト期間って何それ。何なの。学生への嫌がらせだろ。
工藤の肩を叩きながら文句を並べていたら「うるさい」と軽く叩かれた。まあ今の俺はそんなん関係ないくらいハッピーだけどな!!

「じゃあ昼食べ行くかー」

がたりと立ち上がって昼食へ頭を切り替える。何食べようかな!!

工藤は「テンション高いな」なんて言いながら立ち上がり、巣山もそれに続いた。栄口は何か考え事をしていたらしく巣山の「栄口?」の言葉ではっとしたように立ち上がった。


***


「おー、混んでるな」

テスト終わったから、ということもあるのか、食堂は混んでいた。見渡してもよく見えない。俺は何とかパンを数個買って皆と合流した。

「パンが精一杯か」
「ああ」
「天気いいし、裏庭行ってみないか?」

窓から見える太陽は眩しくて。たまにはいいか、と巣山の提案に頷いた。

「人いないなー」
「ゆっくりできて良いんじゃないか」

俺と工藤はさっさと腰を下ろしてパンにかぶりつく。うまい!!
栄口と巣山も座って「いただきます」と言ってから弁当を開けた。

穏やかな時間が流れる。暖かいし、気持ちいい。なんかこのまま寝られそう。いや、放課後は部活が…
なんてうとうとしていたら、巣山の声が聞こえた。

「栄口」

巣山は困ったように栄口に優しく微笑んで手をそっと差し出した。栄口の目線が揺らぐ。

「おいで」

巣山の言葉が発されたのと同時に、栄口は巣山の胸元に身を任せた。
…クラスメイトの目の前でこんなことできるってすごいよな。うん。俺は恥ずかしくてできない。あ、彼女なんかいないけど。

「最初から素直になれば良かったのに」
「…だって、かっこ悪いじゃん」
「なんで」
「俺ばっか頼ってて」
「好きな奴には頼られたいの。俺だってお前に頼ってるし」
「そうかあ?」

ぎゅ、と音がしそうなくらい強く抱き締める巣山。

「君島」
「ん」
「行くぞ」

工藤の言葉に頷いて、俺ら二人は立ち上がった。
これが山口だったら無理矢理でも邪魔してやんだけどな。野球部は…ゆっくりしていてほしい。


***


「なんで、分かったの?」

俺は巣山に問いかけた。力強い腕が心地よい。もっと強く抱き締めて欲しい。

「物欲しそうな顔してたから」
「もっ」

そんな顔してないよ!って言ってやりたかったけど…巣山が言うんじゃ多分してたんだろうな。

「テスト終わったから、ご褒美欲しかっただけ」
「…これだけで、満足なのか?」
「え」

ぎゅっとされていた腕がそっと解かれ、巣山と目線を合わせる。

「これ、は?」

唇を人差し指でなぞられる。やけに巣山が色っぽく見えた。

「…巣山が、欲しいならあげる」

して、なんて言うの恥ずかしくて。
巣山は「困ったな」って言いながらキスしてきた。

「物欲しそうだったのは、俺かも」

困ったように笑われて、もう一度優しい唇が触れた。どきどきするのは久しぶりだから?いや、いつものこと。
テスト用紙を後ろの巣山に渡す時でさえ、指が触れる度にどきどきしてた。

「…俺もだよ」

いつだって巣山には甘やかされたい、甘やかしてあげたい。

たくさんのご褒美、今日くらいは良いよね?
触れたところから、幸せが広がった。


***


「いいなーご褒美。俺も頑張ったから何か欲しいな」
「あ、山口」
「え」
「と、彼女だな」
「おいおいおいおい不純異性交遊はいけないんじゃないでしょうか!!ねえ山口さん!!何がご褒美だ、ええ!?」
「げ、君島!!」
「げ、って何だよ山口!!」
「(君島も脱帽する野球部ってやっぱ偉大だな)」



END



***
百花様へ相互記念の一組です!!
巣甘と甘え口ということで憧れの言葉である「おいで」を言わせてみました。幸せです。
百花様!この度は相互ありがとうございました〜大好きです!!
駄文ですが、受け取って頂けましたら幸いです。
これからもよろしくお願いいたします!


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