修学旅行の夜。
同じ部屋の6人でトランプをしていた。
他の部屋では女子と男子が同じ部屋とかに遊びに行ったりしているんだろうな。その光景を想像すると、男6人が円になってトランプしている自分らに少しだけ笑いが込み上げてきた。
「よっしゃ、革命!!」
青木が出した4枚のカードは全て「5」だった。
ここでまさか革命を起こされるとは思わなかった。さあどうする。
「おい青木ふざけんなよー」
「仕方ないだろ。だってよ、勝ちたいじゃん」
「せこいぞ青木―正々堂々とやれー」
「スポーツマンシップだろー」
「革命だって正々堂々だろ!!」
わいわい騒ぐのはすごく楽しい。でもそれでいながら隣で険しい表情をしている栄口。ついさっきまでは「勝てるかも」なんてニコニコしていたのに。
「…どうしよ」
ぼそっと呟いた栄口。
今の俺の手持ちのカードは結構強くて。出ていないカードとかを考えて革命が起きても起きなくても良い感じで運んで行ける内容に進めていた(ちなみにトランプは苦手じゃない)。
「切って良いか?誰も出せないだろ?」
「や、待って」
「え」
「はい」
俺も同じように4枚出す。
「「「え!?」」」
そこに並べられたカードは全て「4」。いわゆる革命返しというやつで。
「これで、元通りだよな?」
「巣山すげえ…」
隣をちらりと見れば、少し嬉しそうに微笑む恋人の姿。それを見てほっとした俺は、勝ちを確信して手札から次々とカードを出していく。
「で、俺の番でジョーカー出して8切りして、はい上がり」
最後に「11」を出して手札がなくなると、周りはぽかんとした顔で俺を見てきた。
「さらっと勝ちすぎじゃん!?」
「何今の流れ。早すぎてよく分からなかったぞ」
「巣山本当に強いよな」
「んなことねえよ、運が良かっただけだって」
勝てるから勝ったけれど、栄口も二番くらいには上がれるかな。
そんなことを思っていたけれど、なかなか厳しい道だった。
気が付けば二人しか残っていなくて。
「はい上がり」
あっさりと君島が勝利を収めた。
「ええ!!ちょっと君島早い」
「巣山は強いけど、栄口は純粋だから素直だよな」
「…なんだその俺は純粋じゃないみたいな言葉」
「や、そんな意味じゃないけど」
冗談を言っている場合じゃない。栄口がビリになってしまった。
勝負というか遊びなんだし勝ち負けにそこまで執着はしなくても良いのかもしれない。でもそれはノーリスクの場合だ。
「じゃあビリの栄口が罰ゲームくじだな」
「えーまじで」
「まじだろ」
それは避けたかった。俺が罰ゲームするならまだしも栄口にどんな困難が待っているかも分からないのに黙って見ていられるはずがない。
「、今回は俺が訳分かんないことしたからちょっとあれなんじゃねえか」
「言い訳不要!栄口!!」
「分かったよ…ひくよ…」
ガサガサ袋を漁って、栄口は一枚の紙を引いた。
「何、何て書いてあんの?」
「えっと………っ!!」
「ちょっと貸して」
「わ、ちょっと巣山!!」
紙を見て赤面した栄口からそれを奪い取る。何が書いてあるのか心配でしかたない。
「どれど……れ!?」
そこに書いてあったのは「ビリが一位に濃厚キス」という言葉。筆跡から見ると書いたのはきっと工藤あたりだろう。俺は溜息を吐いた。
「…さか」
「お、俺…する、よ」
「ちょっと栄口」
「だって…決まりだし」
真剣な表情で、栄口はだんだん俺に迫ってきた。やばい、可愛い。
普段は俺から近づくから、こうして傍に来られるのは慣れていなくて。
柄にもなくドクドクしている心臓を俺は抑えられなかった。
「ストーップ!!」
「「え」」
「そうだよなやっぱり巣山の革命返しはせこかったよな。よしまた新しいゲームやろうぜもう一回やろうぜ」
「そうだよなあ。栄口に無理させるわけにはいかないからもう一回やろうぜ。そしてこんな罰ゲーム書いた奴誰だよ」
「本当に迷惑だよな誰だよ本当に」
まくし立てるようにわっと会話が進んでいく。いつの間にか栄口の体は青木によって遠ざけられていて。
どうしてか分からなかったけれど、とりあえず助かった。
「…」
「栄口、どうした」
「、別に」
「もしかして俺にキスしたかったのか?」
「っ!!そ、そんなわけ」
真っ赤になって否定する恋人は、やっぱり誰よりも愛しくて。
「また今度な」
「だ、だから」
「次は、二人きりで。罰ゲームじゃなくてご褒美として」
そっと唇を人差し指でなぞってやれば、ますます紅く染まる頬。
「ほら、始めるぞー」
「おう」
(このバカップルに目の前でいちゃつかせるか!!)
もちろん、俺ら以外の4人が何を考えていたかなんて気づきもしなかった。
END
***
匿名様より六万打フリリク「修学旅行ネタ巣栄」でした。修学旅行とかすごくおいしいネタだと思ったんですが、今回は宿舎での一コマにしてみました^^
色んな場所に行かせたりするのもしてみたかったんですが、トランプネタにテンションが上がってしまって…笑
いつか修学旅行編みたいなものを書いてみたいなーと思います。
リクエストありがとうございました!書き直し希望などございましたら御気軽にお申し付けください。
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