「馬鹿だよなあ」

白い天井を見上げながらため息を吐く。ツンと鼻にくるアルコールの匂い。誰もいないカーテンの中。
今まで保健室とは無縁だったけど、まさか熱を出して寝に来るなんて思ってもみなかった。

「…」

そしてまさか、自分よりも先にアイツが俺の体調に気づくだなんて、今考えても情けない。

「巣山」

寝返りを打ったら、カーテンの向こうから声がした。

「っ」
「具合はどう?」

「巣山、保健室行こう」と言われてついて行った。栄口が具合悪いんだと思って行ったら熱を測らされてそのままベッドに寝かせられた。

「…大丈夫だよ」

心配かけたくなくて、平気な声を出す。でも熱があるからカーテンは開けない。もし移ったら俺がしんどいし。

「なら良かった」

カーテン越しに、栄口の影がほんのりと揺れた。今きっと安心したように笑っているんだろうな。
笑顔が大好きな俺は、ついカーテンに手を伸ばしそうになった。抱き締めたい衝動にかられる。

「栄口、授業は?」
「もう昼休みだよ。巣山に弁当届けに来たんだ」
「…もうそんな時間か」

気づかなかっただけで、少し寝てしまっていたらしい。

「びっくりしたよ。巣山ふらふらしてるのに気づいていないんだもん」
「栄口だけだろ気づいたの」
「本人が気づかなかったら意味ないでしょ」
「…悪い」

ああ、本当に情けない。いつも「心配かけて良いんだぞ」って言っている自分が心配かけて。

「でも元気そうで良かった。さ、ごはん食べよう?」

カーテンがゆっくりと開く。今のままじゃ自分がすごく格好悪く感じたから、出てきた栄口の姿を捕まえてそのまま唇を奪った。

「っ、すや」
「心配かけてごめんな」
「…移ったらどうすんの」
「俺が看病すっから」
「…バカ」

普段なら体が弱っている時に触れようとはしない。栄口の体が心配だからだ。
でも今は、なんとなくわがまま言いたくなった。

「…巣山が看病してくれるなら大歓迎だよ」
「…だろ?」

ギュ、と腕の中に閉じ込める。温かい体温が、今はひどく熱く感じた。

「栄口どんだけ俺のこと詳しいんだよ…」
「嬉しいでしょ?」
「まあ俺も色々知ってるけどな」
「え?」
「キスする時の顔がエロいこととか」
「っ、は、早く寝てなよ!!」



END



***
澤田様より六万打フリリク「巣山が熱出して保健室行って栄口がお見舞い」でした。
なかなか栄口君が優位に立つことが無い我が家の巣栄…新鮮で楽しかったです!!
最後は結局巣山君の優位で終わったんですが(笑)
リクエストありがとうございました!!書き直し希望などお気軽にお申し付けください。


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