「すーやま」

そう言って栄口は俺の肩に頭を乗せてきた。じんわり伝わってくる温度が心地好い。

「どした?」
「何でもなーい」

夜の10:00。誰もいない小さな公園。電灯の下。
桜は散ってしまって緑で覆われた木の下で、俺と栄口はベンチに座っていた。

「今日、甘えただな」

そう言って俺は愛しい人の肩を抱き寄せた。少し強ばる相手の体。

「…そんなことないよ」

ベンチに並んで座っていると、うまく正面から抱き寄せることができない。
俺はベンチから立った。

「巣山?」
「何でもないよ」

少し屈んで、不思議そうに俺を見上げる恋人を抱き締める。

「っ、」
「あったけえ」

少し肌寒い夜の空気に、栄口の温もりは程好いものだった。離したくなくなる。

「巣山が、熱いんでしょ」

優しく、でもぎゅっと腕を背中に回してくれて。
それが嬉しくてもう一度腕に力を込めた。小さく震える体を、強く抱き締める。

「栄口、緊張してんの?」
「慣れないだけだよ」
「慣れろよなー、もう付き合って結構経ったぞ」
「…だって、巣山の腕の中力強くて照れるんだもん」

そんなことを耳元で言われたら理性がぶっ飛びそうになる。まずい、ここで抑えられなきゃまずい。

「…栄口抱き締めんのも気持ち良いぞ」
「…なんかそれいやらしいんだけど」
「なんでだよ」
「なんでもー」
「まあずっと照れられるとこっちも照れるんだけどな」
「…これから成長しますよー」

ふっと笑いを溢せば栄口も笑ってて。
ムードも何も無くなったから、ベンチに座り直そうとしたら。

「あ、でも成長したとこもあるよ?」
「え、どのへん?」

聞き返したら裾をきゅっと引っ張られてそのまま頬にキスされた。

「…こんなこと、前の俺だったらできなかったよ」

顔を真っ赤に染める栄口。
でもからかうことなんかできやしない。だって、あれじゃん。俺の顔だって今多分真っ赤だし。
それが格好悪くてそっぽを向いた。でも遅かったらしくて。

「…巣山、顔真っ赤」

あはは、と笑った栄口に仕返しとして唇にキスしてやった。

明日からまた頑張ろう。
君の隣にいると、いつもそう思えるから。

優しい温もりを全身で感じた、まだ夏には遠い夜のこと。



END



***
匿名様より六万打フリリク「とりあえずイチャイチャな巣栄」でした!
いつもとりあえずイチャイチャさせてしまっているのですが足りない気がしたので完全な二人っきりで。
二人がいる夜の公園、毎日覗きに行きたいです(笑)
匿名様、リクエストありがとうございました!!
書き直し希望などありましたらお気軽に連絡ください。


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