「…何なんだこれは」

沢北栄治、ただいま里帰り中でございます。
旅立って半年も経っていないけど、正月だからって帰国しました。

「イチノ先生さようならー!!」
「はいさよなら。雪道気を付けてな」
「はーいっ」

ピチピチした女の子相手ににこやかな表情でひらひら手を振る恋人。
何、実はロリコン趣味だったとか?あれ、実は俺みたいな筋肉質な大男は用無しだった?

「…沢北だピョン」
「うわ!!深津さん」
「沢北、何しに来たんだおめー」
「アメリカにいるはずだろうがよ」
「河っさんに松本さんまで…」

何人ここにいるんだ。

「俺ら四人、ここでバイトしてんだからしょうがねーだろ」

松本さんがさも当然のようにしらっと言い切る。ごもっともです。

「でも、イチノさんがあんなに人気あるなんて聞いてないですよ!!」

そう、ここは小中学生を対象とした塾。
せっかく日本に来たんだからイチノさんに会わずに誰に会う!!ってことで連絡をしてみたら。

「バイト入ってるから暇じゃない」

と言われてしまって。
進路も決まって時期に暇だからバイトを始めたらしい。
だからとりあえずバイト先に来てみたのだ。

「そういや昨日深津女の子からイチノ先生に彼女いるか聞かれてたな」
「いないっていったピョン」
「間違ってはないな」
「え!!」
「したら女の子喜んでたよなー河田」
「おう」
「な、なんでそんなこと言ったんですか!?俺がいるじゃないですか!!」
「彼女じゃないからだピョン」
「う」

その通り、その通りなんだけど!!

「イチノモテるよな」
「教え方うまいし」
「優しいし」
「一昨日なんかクッキー貰ってたぜ」
「うわ、良いなイチノ」

河っさんと松本さんがじわじわ俺を追い詰めていく。

「や、やめてくださいよ!!俺のイチノさんなんですからね!!」
「小さな女の子に嫉妬なんて見苦しいピョン」

ぐさり。俺の脆いガラスのハートは深津さんの一撃によって粉々に崩れ去った。立ち直れないかも!!

「お前らあんま沢北いじめんなよな」

コイツすぐ本気にするんだから。

困ったような笑いと共に現れたイチノさんを、衝動的に抱き締める。ずっとずっと欲しかった温もり。感覚。

「おいどうした沢北」
「会いたかったですイチノさん」
「おい、皆見てるぞ」
「良いです別に」

もう、かっこつける必要なんかないって思った。

小さな女の子相手に嫉妬しても良いじゃないですか。
いつも一緒にいられない、俺は海の向こうにいるんです。
不安になるのは仕方ないじゃないですか。

そんなことをぶつぶつぼやきながらイチノさんを腕に閉じ込めたままにしていたら、そこからふっと笑い声が聞こえて力を緩めた。

「イチ」
「なーに言ってんだバカ」
「、」
「確かにイチノ先生イチノ先生言ってくる皆はお前より何倍も可愛いけどな」
「う」

そうですよね。
こんな大男に可愛げなんかないですもんね。

「でも」
「?」
「それでも俺は、どっかの可愛げもなくてバカで単純でバスケしか頭にないような奴が好きなんだ」

分かったか?
と笑いながら軽く肩を叩かれる。

「イチノさんー!!」

ぎゅーっと抱き締めると、イチノさんは「苦しいよ」って言いながらも抱き締め返してくれた。

「イチノ先生良いな!!私もぎゅーってするー!!」
「私もー!!」
「皆あの大男を倒してイチノ先生を奪ってくるピョン」
「分かったよ深津先生!!」

深津さんの掛け声で俺らの周りには女の子がたくさんやってきて。
そしてイチノさんにまとわりつき始めた。

「あ、やめろー!!」

俺はイチノさんを担いでその場から逃走する。

「イチノ先生!!」

後ろから色んな声がしたけど無視して全力疾走をした。
そしてそのまま外へ行き昔よく訪れた公園へ辿り着く。

「お、い沢北!!」
「っはあ、…い、勢いで来ちゃいましたがまだ授業ありました?」
「…いや、無いから大丈夫だけど」

俺から離れたイチノさんは、困ったように笑って呟いた。

「お前アメリカ行ってもこういうとこ変わってないよな」
「え!俺結構大人びたって言われるんですけど」
「そんなことないだろ」

さらりと即答されて泣きそうになる。
でもイチノさんは言った。

「こんな無茶苦茶、お前だからなんか幸せにまで思えるよ」
「幸せ?」
「愛されてるなって…なんか恥ずかしいけど」

ぼそぼそと照れ臭そうに言ってきたのが可愛くて、俺ははっきりとで言った。

「はい!!世界で一番愛してます!!」

イチノさんは、嬉しそうに笑ってくれた。



***

「イチノ先生行っちゃったー」
「今日はチョコレート持ってきたのになあ」
「俺が貰うか?」
「河田先生は…怖いから…あげない…」
「え」
「じゃあ俺は?俺なら怖くないだろ?」
「松本先生はなんかいやらしいよね」
「いやらしい!?」
「分かるー!!そんな感じするー」
「じゃあ深津先生にあげる!!」
「ミステリアスで素敵だもんね」
「…ピョン」
((最近の女の子って怖い!!))



END



***
ゴトウ様よりフリリク「沢イチ+山王三年生ネタ」でした。
全然負担なんかじゃないです!大好きなので楽しかったですよー^^
近頃の女の子って怖いですよね(笑)
ゴトウ様、素敵なリクエストありがとうございました!!
書き直し希望お気軽にお申し付けください。


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