朝日が差し込むベッドで、重たい瞼を上げる。

「ん?」

隣には温もり。ふい、と頭を傾げれば見慣れぬ風景が視界に広がった。

「…」

ここどこだっけ、だなんてぼんやりした頭を働かせてもう一度目を閉じた。眠たい。体が重い。

最近自分がおかしい。
プレーに集中できなくてシュートの成功率も減ってしまった。
チームメイトに相談したら「スランプだよ」だなんて笑われて。
むしゃくしゃしながら練習していても身が入らなくてまたシュートを外す。

その時後ろから「珍しいね」と愛しい声が聞こえた。
その言葉に振り向けば、いるはずのない人が立っていた。

「、宗!!」

ガバリと起き上がる。視界には宗の姿は見当たらない。

練習後に宗に連れられて宗が泊まるホテルに行った。
昨夜は温かいスープ二杯と食後のホットミルク。練習した後だったのにこれだけ口に入れてシャワーを浴びた。
お腹が空いているのは自分でも分かっていたけれど食べられる気持ちじゃなかった。
そんな俺の気持ち分かってスープとミルクだなんて宗には敵わない。
スープも野菜やら豆やら栄養に気を遣った中身だったし。

宗は「栄治、先に寝な」と言ってベッドに俺を案内した。
アメリカの大学を見学に来たらしい。そのついでに俺のチームを観に来たんだって。

さすがに申し訳なくてソファーで良いと言ったけど「お客様だから」って笑った。
甘えすぎるのもどうかと思ったけど、おやすみと言いながらおでこにキスされたから素直に従った。

そして今に至る。

「おはよ、栄治」

朝ごはんきたよ、なんて言いながら笑って宗は寝室に入ってきた。このホテル広いな。

「ごめんな、ベッド」

多分宗はソファーで寝たのだろう。

「大丈夫。栄治こそ疲れはとれた?」
「っ」

宗の言葉に、一気に涙が溢れた。

「栄治」

宗は優しく耳元で名前を呼んでそのまま俺を抱き締めた。
前より肩幅が広くなったと感じるのは久しぶりだからなのかな。

「…さ、いきん、うまくいかな、くて」
「バスケが?」
「、ん」
「…何か、集中力を邪魔することがある?」

俺は思考をめぐらす。
そして思い立ったのは…

「宗」
「ん?」
「…最近、連絡くれなくて…不安、だったかも」

前までは頻繁にメールや電話をくれたけれど、最近は宗の受験があったりでなかなか連絡をとれずにいた。
少し重いかもとか思ったけど、宗は一瞬だけ目をぱちくりさせてから困ったように微笑んだ。

「俺かあ…」
「や、分かんないんだけど!」
「じゃあ試してみる?」
「え……っ」

宗は俺の頬に手を添えてキスしてきた。
懐かしくて大好きな感触が嬉しくて、腰に手を回して力を込める。

「っ、栄治?」

いつもはしない行動に、宗は不思議そうに唇を離した。俺は無視して唇をもう一度くっつける。
次は宗も嬉しそうに笑って何度もしてくれた。

「これで今日もうまくいかなかったら俺のせいじゃないってことだね」
「え?」
「こんなにくっついてて不安解消されないなら困ったものだ」
「っ」

宗は見送られて、俺は練習へと向かう。
その日のシュートは、いつもより綺麗に弧を描いてゴールへと入った。

「やっべ」

スランプ解消に嬉しくなって宗に電話した。

『良かったね』
「おう!ありがと、宗!」
『じゃあこれからは不安にならないように毎日電話で愛を囁こうかな?』
「っ!!」

もうスランプは来そうにもない…かもしれない。



END



***
テル様よりフリリク「神沢でスランプネタ」でした!
スランプネタすごく萌えたんですが文章にするのが難しかったです…なんてこった…
テル様!神沢に賛同、そしてリクエストありがとうございました!
書き直し希望お気軽にお申し付けください。


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