馴れ初め番外編

15と16の間らへんのお話です。




「えっと…アミノ酸がこうなるから…っと。」

幼稚園の時の卒園アルバムには、こう書いてあった。
『神宗一郎 みんなを助けるお医者さんになりたいです。』
そのアルバムを見る度、母は「子供らしくないわね」と笑う。
だけど、そんな小さな時から俺は医者になりたかったらしい。
いつからなんて、そんなことは覚えていないけど。

「…難しいなあ…」

志望校を国内の名門から外国の有名大学に変えると、学習内容はぐんと難しくなった。
国内なら模試でA判定を貰っていたし、このままなら普通に合格できそうだと担任から言われたりもした。
でも…

『御免、バスケと宗…両方、選べな、くて…』

二年生のインターハイ試合前夜、宿舎の屋上。
あの時の悲しそうな栄治の顔が、頭から離れない。
愛しい、たった一人の人。

「栄治、英語話せるようになったかなあ。」

向こうで暮らすと自然と英語身につくっては聞いたことあったけど。
オッケーしか言えなかった栄治が英語ペラペラなんて想像すると面白い。
いつも一生懸命な栄治だけど、そんな栄治が可愛い。

『わざわざ外国の大学なんて…』
『俺が、行きたいんだ。』
『国内でも十分じゃないの?』
『行っちゃ、駄目かな…』
『あまり帰ってこられないでしょう?寂しいじゃない。』
『父さんがいるよ。大丈夫。』
『…』
『絶対合格してみせるから。』
『そうね、頑張って!』

家族から海外留学の同意を貰った。
父さんは医者を継ぎたいって言ったら嬉しそうに笑っていた。
親戚は皆「神家の夢を背負っているから頑張れ」と言っている。
言い出したのは俺なんだから、頑張らないと。

「宗一郎」
「ん、どうしたの母さん」
「沢北君から、手紙届いているわよ。」
「え」

栄治からの手紙。
以前俺が英語で手紙を出したのが三ヶ月前だから、三ヶ月ぶりの手紙だ。
英語読めなかったのかな。
長い手紙書いちゃったしなあ。
とりあえず凄く嬉しくて、俺は手紙を母さんから受け取った。


宗へ
宗が英語で書いてくれたので日本語で書きます。
お元気ですか。
俺は元気です。
本場でバスケするの本当に楽しい。
レベル高くてついていくの大変だけど、楽しい。
宗にも、アメリカのバスケ生で見てほしい。
うまくいえねーけど、いろいろ学ぶものたくさんある。
英語にも大分慣れました。
でも宗の手紙は難しかった…
何書いてあるか不安だったから、だれかに訳してもらうことできたかったんだからな!
次は日本語でかまいません。
チームメイトに宗のこと話すと会いたいって言うんだ。
いつか来るき会があったら会ってやってください。
たまに日本に帰りたくなります。
じゅうじつしているはずなのに、足りないです。
早く宗に会いたいな。

栄治より


「栄治…」

比較的漢字が少ないところに愛しさを感じる。
日本語もままならないのにアメリカ行っちゃって。
本当に度胸は凄い。

「頑張らないと。」

君に、会いたい。
毎日会いたい。
傍にいたい。
夢を追いながら好きな人と一緒にいられるのは本当に憧れだと思う。
栄治だって言っていた。

『御免、バスケと宗…両方、選べな、くて…』

栄治が選べなかったことを、俺は両方選ぶ。
もう悲しい泣き顔は見たくない。

「…もう少しやろうかな。」

手紙を机にしまって、新しい参考書を開いた。


END






***
まき様より四万打フリリク「神沢*馴れ初め連載番外編(甘)」でした。
楽しかったです全力で。
やっぱり神沢好きです、はい。
有難うございました!!



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