桜の下で

___



『これで、入学式を終わります』

マイクから、聞き慣れない声が響いた。
やっとかしこまった雰囲気から解放される。
各々が退場し、教室で簡単なホームルームがあった後に解散となった。
中庭には、沢山の上級生が集まっている。
部活動の勧誘も始まっている。
俺は約束を思い出して中庭へと走った。

「じゅーんさーんっっ!!」

人混みの中に、見慣れた後姿を見つけてダッシュして抱きついた。

「いでっ…げ、馬鹿犬!?」
「ひどいよー準さんっ」

細い腰にしがみつけば、「キモい」と無理矢理剥された。

「つか、中等部の入学式は明日ですよー」
「…俺高校生なったんだけど」
「そしてペットショップは隣町ですよー」
「…俺普通に人間なんだけど」

中等部から上がってきた今日の入学式。
久し振りに会えるとウキウキしてたのに。
入学式後の約束までしてたのに。
準さんは変わっていない。
相変わらず俺のこといじめる。
ああ、和さんはどこかな。
俺の神様の和さんはどこかな。
そう呟いていたら「俺の和さんだ」と準さんに怒鳴られた。
ひどすぎる。

「準さん変わってないね」

そう言うと、準さんは盛大に顔を歪めた。
うわ、不細工。

「あ?」
「相変わらず意地悪!」
「躾だろーが。飼い主の役目だろ」
「俺の飼い主は和さんだもんっ!!」
「したら自動的に俺のペットにもなんだろ?俺と和さんは夫婦なんだから」
「…」

準さん、黙ってれば格好良いのに。
美人だし、スタイル良いし、優しいし(俺以外にはね!)。
でも、ちゃんと俺のこと分かってくれる良い先輩

「つか、タメ口利くな馬鹿利央」

…だと、思う…の、かな?
やっぱりひどい先輩だ。

「ねえ準さん、彼女できた?」
「は?」
「俺のクラスの子のお姉ちゃんが準さんに告白したって言ってた」
「…誰のことだ?」
「え、誰だか分かんない位告白されてるの!?」
「う、うっせー!」
「ぎゃーっっ」

準さんに思い切り背中を叩かれた。
二人でギャーギャー騒いでいると、高めの声が後ろから聞こえた。

「わー、あの子髪の毛金髪ー」
「あんま近寄んない方が良いね」
「長身だし怖いよ〜」
「遊んでそうだね…気をつけなきゃ」
「ねー」

くすくす笑いながら、女子生徒が通り過ぎていった。
目尻が熱い。
言い慣れてきたことなのに、やっぱり何回経験しても辛い

クオーターだけど、髪はちゃんと遺伝に沿っている。
目の色も特殊だし、やっぱり近寄りがたいのかな…

「おい、勝手なこと言ってんなよ」
「「え」」
「こいつ外人の血混ざってるから仕方ねーの」
「準さ」
「何も知らねーくせに悪口言うな!!」

涙が溢れた。
こういう所も変わっていない。
準さんは俺が困ったら助けてくれる。

「おーおー準太。入学式から暴れるなよー」
「「和さん!」」
「いきなり怒鳴って悪かったな、後輩が」
「…河合…」

さっきの女子生徒は和さんと話す。
クラスメイトらしい(つまり、準さんより先輩!?ちょ、準さんまずいんじゃ!!)。

「「勝手なこと言って御免なさい!!」」

女子生徒はそう言って帰っていった。
和さんがちゃんと説明してくれたらしい。
俺のことも、準さんのことも。
さすが和さんだと思う。

「準太、入学式後で保護者もいんだから気をつけろよな」
「げ、慎吾さん」
「げってなんだ、げって」
「そのまんまです」
「てめ!」
「あ、利央。この人三年の慎吾さん」
「は、初めまして慎吾さん!!」
「おー、一年の割りにでけえな」

慎吾さんは腕を伸ばして俺の頭を撫でた。
うわ、良い人!

「利央騙されんなよ。この人…ごにょごにょ」
「え、そうなの!?」
「おい準太何言った。そして二人してその汚物を見るような目をやめろ!」

「おーい皆!恒例の写真撮るぞ〜」
「ああ、入学式後恒例の、桜の下で野球部集合写真!」
「利央も来いよー」
「え、良いの!?」
「野球部の一員なんだろ」
「っ、うん!!」

これから、どんな夏が待っているんだろう。
そんな不安と期待に包まれて、俺はシャッター音の前に笑顔を魅せた。



END



***
匿名様四万打フリリク「桐青入学式ネタ」でした。
入学式…って、こんな感じで良いんですかね…
入学式に在校生は参加しない高校通ってるんでイメージし辛くて一応同じ設定にしました。
桐青でのリクだったんですが、この四人で良かったですかね…
有難うございました!
書き直し希望があれば承りますっ



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