繋がる僕等

___


遠距離恋愛は寂しいもので。
会いたい時に会えない。
直接声聞きたい時に聞けない。
触れたい時に触れられない。
傍にいたい時にいられない。
それが、遠距離恋愛。

メールや電話で繋がってる。
寧ろ、気持ちでいつもいつも繋がってる。
そうは言っても、実際は寂しい。
だって、好きなんだから。
いくら相手のこと信じていても、辛いし苦しい。

「…っ」

たまに会うと、目を合わせるのも恥ずかしいのは何故なんだろう。
ただの友達ならそんなことは無いんだろうけど。
恋焦がれている相手だから仕方無いのかな。
キスをするのだって、緊張して体が震える。

「…栄治」
「っな、何?」
「震えてるけど、大丈夫?」
「!」

宗は、心配そうに顔を近付けてきた。
うあ、もっと恥ずかしいって。

「え、うん!大丈夫だけどっ」
「そう?」
「…何か、久し振りだから緊張して」

いつも慣れた頃にお別れだから。
それの繰り返しだから。
ある意味悪循環?
終わりの来ない初々しさ。
胸のドキドキは消えることの無い心地の良さであって、悪さでもある。
少し複雑な感じ。

「…俺も、緊張してる」
「え?」
「でも」

宗は言葉の続きをキスでくれた。

「…っん」
「栄治」
「…んっそ、宗…」

滑らかな舌が入ってくる。
いつまでも慣れることはないと思う、宗の大人のキス。
甘い吐息が、口の端から漏れる。

「…っ栄治、その感じで名前呼ぶの禁止」
「え?」

宗は困ったように笑う。

「今の顔と声がかなりやらしかった」
「……っ!?」

俺は手で顔を覆った。
え、俺そんな感じだったの!?
自分じゃ気付かなかったけど、もう恥ずかしくて土になりたい。
俺は傍のベッドに顔を埋めた。

「…栄治?」
「俺は土になりたい」
「うん、困るね」
「…めっちゃ恥ずかしい」
「可愛かったよ?」
「…っ」
「可愛すぎて、どうにかなりそうだった」



宗の方が反則だと思う。
そんなこと耳元で囁かれる俺の身にもなって欲しい。
うん、ドキドキが止まらない。

「だから、顔見せて?」
「無理無理無理無理…」
「栄治?」
「無理です神さん!!」

だって、今この手を取ったら真っ赤な俺の顔とご対面する。
それこそ恥ずかしい。
いちいちドキドキしてる俺とは正反対に、宗はケロッとしてるんだから。
そんな宗にこんな顔は見せたくない。

「栄治」
「っ」

ずるい、いつもより低い声。

「手、離して?」

耳元で囁かれて、そのままこめかみに唇を落とされた。

「…」

逆らえるはずも無く、俺は手をゆっくり離した。
すると優しく微笑む宗がいて。

「良い子」

宗はそう言って俺の頭を撫でて、額・瞼・頬…とキスが順に降ってくる。
キスは唇まで落ちてきて、顎…そして、首元まで行った。

「っあ、宗…」
「栄治、首筋弱いんだっけ?」
「っん…ん」
「栄治、可愛い」

首筋から唇を離して欲しくて宗の問いに頷いたのに、宗は止めることなく首筋にキスを降らす。

「っや、やめっ……!!」

「やめて」という声は、宗の一撃によって空に消えた。
宗は俺の首筋を優しく噛んだのだ。
くすぐったいのに笑いがこみ上げてこない。
止めて欲しいのにもっと欲しいと思う自分もいて。
甘い快感に溺れてしまいそうになった。

「ん、そ、宗…っ」
「ん?」
「ま、待って、ちょ、」
「どうしたの?」

不安そうに宗が顔を上げる。
俺の首筋から離された宗の唇が、やけにドキドキさせてきた。
この綺麗な唇で、もっと触れて欲しいと思った。
思った、けど…

「…どこまで、やるの?」
「え?」
「最後…まで、やるの?」

聞いていて恥ずかしかった。
それこそ土になりたかった。
でも、羞恥よりも不安が勝っていたから。
だから、俺は震えながら聞いたんだ。

「…栄治が、したくないなら…俺はいつまでも待つよ」
「や、やじゃない、けど…」
「けど?」
「け、けど…最初は痛い、って聞いた…から」

言っていて自分がどこぞの処女だって思った。
だけど、不安だったんだ。
ずっと、俺の全部を宗のモノにして欲しいと思ってた。
逆に、宗の全部を俺のモノにしたかった。
でも、怖かったんだ、ずっと。
一つになることが、快感や嬉しさだけじゃないってことが。

「宗のことは、好き。俺、最後までいきたい。でも」

でも、震える体は止まらない。

「栄治」
「え……んっ」

宗は俺に優しく口付けてきた。
ただ触れるだけの、温かいキス。

「…そ、う…?」
「栄治の気持ち、嬉しい」
「っ」
「やっぱり怖いよね。俺だって怖い。栄治に嫌な思いはさせたくないから」
「宗…」
「でも、栄治が欲しいって気持ちも本当なんだ」

宗の真剣な瞳に心が溶かされていきそうになった。
何でこんなに格好良いんだろう、俺の恋人は。

「俺は、栄治に会いたい時も会えないのが正直辛い」
「!」
「だから、こういう時に全てを伝え合いたいと思うのは俺の勝手かな…」
「そ、そんなことない!」

俺も同じ気持ちだとはっきり伝えると、宗は安心したように笑った。
そして俺の手を握って囁くように言った。

「栄治が無理だって思ったら、その場で止める」
「…っ」
「栄治が少しでも気持ち良くなれるように努力する。だから…」

だから、栄治の全てを俺にください。

宗の真っ直ぐで温かい気持ちが、俺の不安を一瞬で消してくれた。
だから俺は小さく頷いた。
その返事に、宗は嬉しそうに笑って「有難う」と言いながら俺を抱き締めた。

宗と俺の指が、優しくゆっくりと絡み合う。
そして大人の階段を、宗の沢山の愛情に包まれながら登り始めた。
初めての大人の愛撫は少し痛かったけど、宗の全てが温かくて優しくて、心地良いモノだった。



END



***
九連様四万打フリリク「神沢*本番無しの初体験話(甘)」でした。
本番無しでもそういう雰囲気を書くのはやっぱり緊張します…
でもとても楽しかったです^^笑
沢北君の可愛さに終始耐えてる神君を想像すると悶えます←
有難うございました!



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