「栄口、背中流してやるよ」
「え」
「疲れてるだろ?今日までテストだったもんなあ…」
巣山は湯船から上がって俺の後ろへときた。
やばい、心臓破裂しそう。
「それ終わったら、一緒湯船入ろうな」
「!?」
「あれ、どうした栄口…シャワー浴びてるだけなのに顔真っ赤だぞ」
「…意地悪」
ニヤニヤしながら言ってくる巣山に、俺はシャワーを向けた。
「、っ」
「もう、いつ人来るか分かんないんだからね!!」
「誰も来ないだろ、ってかそう思うならシャワーで遊ぶなよな」
「遊んだんじゃないもん、正当防衛だから」
「生意気だぞ栄口―」
見慣れていたはずの肉体はいつもより数段素敵に見えた。
久し振りに見るんだから刺激に耐えられないのかもしれない。
いくら男だって好きな人だしね。
最近お互い忙しくて色々とご無沙汰だったし…
って、別にそのために一緒にお風呂に入っているわけじゃないけど。
そう、今日仕事を終えて家に帰ったら、こういう状況にならざるをえない悲劇が待っていた。
「ただいま巣山ー」
「おかえり栄口」
「今日は早かったんだね」
「まあな、今日はそんな忙しくなかったし」
「あ、ご飯も作ってくれてたの?」
テーブルには皿とご馳走が並べてあった。
「おう、風呂も沸かそうと思ったんだけど…」
「あ、いいよいいよ。俺沸かしてくる」
「あ、そうじゃなくて…」
「え?」
「風呂のお湯が出なくなったから、明日業者修理に来る」
明日は土曜日で巣山は仕事が休みだと言っていた。
そっか、さすがに今から修理って訳にはいかないから明日だよな、うん。
「あ、そっか…って明日土曜日だけど俺授業参観だ!今日お風呂入れないの?」
「…銭湯でも行くか」
そういうわけで、二人で銭湯までやってきたのです。
久し振りに来た銭湯は閉店が迫っていることもあってか誰もいなかった。
つまり広いお風呂に巣山と二人きり。うん、恥ずかしい。
家では一緒に入ることがまずは無いから色々と新鮮だ。
「栄口の体泡立ち良いな」
「人を石鹸みたいに言わないでよー」
「すみませんね、痒いところはありませんか?」
「無いです無いです、じゃあ次は俺が流してあげるね」
「あ、その前に」
くるりと巣山の方を向くと、巣山が下に身を屈めた。そして…
「っ、冷た!!」
「さっきの仕返し」
「…ちょ、馬鹿!!」
巣山は俺の背中を冷水で流し始めた。
火照った体には程よいどころか冷たくて。
「とーめーてー!!」
「悪い悪い、やりすぎた」
「本当だよ、もう!」
でもお互い様ってことで結局笑い合った。
「じゃあ浸かるか」
「、うん」
なかなか一緒に入ることがないから緊張してしまう。
ドキドキしながらゆっくりと入っていく。
「ザブーンと入れば良いのに」
「だって」
「高校の頃はオープンで入ってたじゃん」
「あれは皆一緒だったし…恥ずかしがってたら馬鹿みたいじゃん!!」
ムキになる俺を巣山は楽しそうに見て、笑っていた。
俺は恥ずかしくなって巣山にお湯をかけた。
「うわ、おい栄口!!」
ムキになって巣山もお湯をかけてくるから、俺は逃げて。
だけど腕を掴まれてしまった。
「す、やま?」
「逃げんなよ」
ちゅ、と軽く鎖骨に唇を落とされる。
「今度、温泉でも行くか」
「わ、本当?」
「合う休みが取れたらな」
「…頑張りまーす」
俺達は湯船の中で小指を繋いだ。
「温泉じゃ二人でゆっくりできるね」
「いつもゆっくりだろ」
「そうじゃなくて」
今度は俺が巣山の唇にキスをして。
「こういうことも、ゆっくりできるね」
巣山の顔が赤かったのは、湯船のせいか、それとも…
「…たまに大胆になるから困るよな」
すぐに抱き締められてしまったから、確かめることは出来なかったけれど。
END
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楽しかった…です。ラストお題。
一応これで巣栄の五万打は終わりましたー!!
有難うございました^^
お題はすんなりと書けるから受験シーズンにぴったりですよね。
またやりたいと思います!!