「あ、栄口」
委員会の役割で、会議室で集会の資料を作っていた。
「志賀先生」
「悪いけど今からこの会議室使うんだ。移動してもらってもいいかな」
「あ、良いですよー…何処なら良いですかね」
「生徒会室なら使っても良いよ。丁度生徒会使ってないし」
「入っても良いんですか?」
「多分生徒会担当の先生がいるはずだから、事情話せば大丈夫だよ」
「有難うございます」
生徒会室にはなかなか入ることができない。
だから少しだけドキドキしている。
生徒会の人とかいたらどうしようかなあ…
そういえば、生徒会担当の先生って誰だっけ…
「失礼します」
生徒会室のドアを開けると、その先生の姿はなかった。
他の生徒の姿も見えなくて、勝手に使っても良いのかという不安に駆られる。
「…誰もいないのかな」
キョロキョロしていると、向こうのソファから声がした。
「、ん」
「!?」
え、誰かいる!?
俺はこっそりとそのソファに近づいて覗き込んだ。あ、誰かいる。
「って、」
声をあげたかったけど手で口を押さえて我慢する。
ソファには世界で一番愛しい人が眠っていたからだ。
「、巣山先生…」
小声で名前を呼んでみる。返事はない。まだ寝ている。
「こんなとこで何してるんだろう…」
「、ん?」
「!!」
「ふあ、あれ…栄口?」
巣山先生はむっくりと起き上がって坊主頭をさすった。
「御免なさい…起こした、よね」
「や、寝るつもりなかったんだけど…最近あんま寝てなかったからさ」
「そ、っか」
「で、何でお前はここに?」
俺は事情を説明した。すると巣山先生はニコッと笑って俺の手から資料を取る。
「あー、綴じ込みか?ホチキス何処だっけ…ああ、あった」
「お借りしまーす」
「じゃあ綴じ込み頼むな。俺はページと枚数揃えるから」
「え」
「一人でやるより早いだろ。どうせもう一人の委員の子に“部活無いからやっとくよ”とでも言ったんだろ?」
「う」
巣山先生は俺の髪の毛をぐしゃぐしゃかき混ぜた。
「頼っとけ」
「う、あ、ありがと」
ああ、やっぱり先生はいつも格好良い。
優しいし、温かいし、心も体も大きいし。
俺にないところをいつも補充してくれる。
「先生」
「ん?」
「やっぱり大好き」
「…やっぱりって何だよ」
誰もいないのを良いことに、俺は先生の腕に絡み付いて頬を寄せた。
「栄口」
「はい」
「生徒会室のいいとこ教えてやる」
「え?」
「冷暖房完備・資料沢山・道具沢山・ソファがある」
「え、う、うん…」
「そして」
先生は入り口に近づく。
ガチャン
「え」
「鍵が、閉まるところ」
「…っ」
「久し振りに、ゆっくりと過ごそうか」
「…資料終わってからね」
「分かってます」
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