「イチノさん、決めましょう」
「え?」
「お試しの期間、決めましょう」
「、ああ…そうだな」

繋いだ手は離さないまま、俺は歩く速度を少し緩めた。そしてイチノさんに話しかける。
本当はいつまでもこうしていたいけど、イチノさんが飽きてしまったらそこで俺の恋心は終わってしまう。好きって言葉も信じてもらえなくなる。それだけは避けないと。

「九日間、でどうだ?」
「え」
「それだけあれば、俺もお前も“付き合う”ってことがどんなことなのかはっきりしてくるんじゃねーかな」
「な、なんで九日間なんですか?区切り良いなら一週間とか十日とか…」
「え、いや…ただお前の背番号が9だったから。それだけだよ」

イチノさんは少しだけ無邪気な笑顔を見せてくれた。
ああ、こんな顔もするんだ、イチノさん。
ただの先輩後輩だったら話す機会なんてそんな無くて、何も知ることできなかったよな。
うわ、なんか凄い優越感に浸ってる自分が気持ち悪い。

「じゃあ九日間宜しくお願いします」
「お願いって、これ以上のこともするとは言わないよな」
「え」
「えって何だ、えって」
「まあ良いじゃないですか!!楽しみましょうね!!」
「はいはい」
「あ、今日から九日間ですか?明日からですか?」
「…どっちでも良いよ」
「じゃあ明日からですね!」
「何だそれ」

ふっと呆れるように笑ったイチノさんの手を、ぎゅ、と強く握りなおした。

「まず早く帰りましょうか!!」
「え、このまま帰るの」
「はい!」
「…分かったよ」





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