「はあ?」

何言ってるんだこの後輩は。ただの馬鹿なのか、違うのか。

「何だよ、それ」
「その通りですってば」
「その通りってな、俺もお前も男で。そして先輩後輩で。どこに付き合う理由があるってんだよ」
「だーかーらー」

ぎゅ、と手を強く握られて見つめられれば、思わずドキッとしてしまう。
だって、普通に男から見ても格好良いからさ、沢北って。

「試しに、付き合ってくださいって言ってるんじゃないですか」
「た、試しにって…」

試しにでも何でも、何で男と付き合わないといけないんだよ!

「女の子と付き合う時に何も分かりませんなんて言ったら愛想尽かされますよ」
「でも」
「女の子で試しなんてしたら心痛めるけど、男同士だったら別に何もないじゃないですか。あんなこともあったなあとか思える思い出位になってますよ」

こいつはたまに頭良いんじゃないかと思わせる態度や言動をする。
まあそれは錯覚に過ぎないんだけど。
まず何故か握られた右手がずっと熱い。

「、離してよ」
「あ、すんません」

沢北は素直に手を離した。ああ、何か気が抜けた。

「で、どーなんすかイチノさん?」

耳元で囁かれて、端正な顔で真っ直ぐ射抜かれる。
俺は無意識の内に頷いてしまっていた。





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