「好きです、付き合ってください」
何でこんな時に裏庭の焼却炉まで教室のごみを持ってこないといけなかったんだろう。
「悪いけど」
「バスケが一番でも良いの、私は二番で良いから…」
「いや、俺好きな人いるから」
はっきりとした口調で話した告白の相手は、普段より数段格好良く見えたような気がした。
「あれ、イチノさん」
「、!!」
女の子が走っていったのが自分がいる方と逆方向だったから安心していた。
気がつけば沢北が目の前にいて。
「ゴミ箱持ってきたんですか」
「…早く捨てたかったのに、どっかの誰かさんが告白受けてなんかいるから行けなかった」
「…見てたんですか」
やだなーイチノさん、だなんてへらへら笑いながら俺のゴミ箱を沢北は手に取った。
「捨ててきます」
「いいよ、ここまで来たんだし」
「イチノさんのクラスに返しておくんで」
すたすたと歩き始める沢北を、俺はつい不思議そうに見てしまった。
また、一面。
今日は新しい沢北が沢山いる。
あんま話したことなかったけど、実は素直で純粋な良い奴だったんだ。
優しいところ、はっきり言うところ、そして…振り慣れているところ。
さっきの告白を振る言葉に躊躇いは感じられなかった。
モテる奴はやっぱり違うよな。
「あ、イチノさん」
「ん」
ゴミ箱片手に沢北が振り向く。
「告白のこと、黙っててくださいね。河田さんから絞め技喰らいたくないんで」
そう言って笑った顔は、どうしようもなく憎たらしかったのに、すごく格好良く見えた。
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