「で、どうしたんだピョン」
「…親が帰ってくるまでテレビ観ながら色々と日常的なことを話して、帰ってきて一緒にご飯食べて、少し四人で話して…帰った」
「…本当にそれだけ、ピョン?」
「当たり前だろー、他に何しろっていうんだよ」

本当に付き合っているわけじゃあるまいし、とイチノは呆れたように言った。
今日は月曜日で、昨日は部活だったから沢北もいてなかなか聞けなかった一昨日のイチノん家での話を聞いている最中。
俺はイチノのことをよく見ているし(娘のようなものだから)、よく分かっていると思う。
ただ、イチノは優しくて可愛いのだけれど鈍感なのが勿体無い。

「昨日も一緒に帰ったし、今日も一緒に帰る?」
「うん、まあ一応付き合ってるっていう訳だし」
「…ピョン」

きっとイチノは沢北のことが好きなんだ。
沢北がイチノを好きだっていうのも周知の事実だけど、イチノが沢北を好きだっていうのも周知の事実なんだと思う。
イチノは相手のことにも鈍感で、自分に対しても鈍感だ。
自分に対してのことじゃない周りのことにはさり気無く敏感なんだけど。

「なんか付き合うって大変だよなあ」
「え」
「だって、今の感じだけじゃなくて…その、他にも色々とするわけだろ?」
「何を、ピョン?」
「え、だから…」

ボソボソと恥ずかしそうに喋るイチノを温かく思い、これ以上は聞かないことにした。

「イーチーノーさーん!!」
「あ、沢北」
「英語の辞書貸してください。忘れちゃったんですよ」
「持って帰ったのか?偉いな、勉強してんじゃん」
「え、あー…まあ」

問題は、イチノの鈍感だけではないのだけれど。





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