聞き間違いかと思った。 いや、すみません、もう一度いいます。 『いやあのえっと………え?』 いきなりの告白(いろんな意味で)に戸惑っていると、最悪の言葉が降りかかってきた。 「いきなりだけど罰ゲーム言うよ」 『えっ早っ、ちょ、まっ』 (どどどどうしようっ……嫌な予感しかしないのは気のせい?) きっと口を開閉しているだろうと、自分でもこんなときに限っていつもより冷静な考えが浮かぶ。 「バレンタイン頂戴」 『えっと……はい?』 いや、あの待てよ。 どっからここに繋がる? 美術室からの帰り→バスケしよう→中学の子だ→結構本気なバスケする→一目惚れだった→………。 →罰ゲーム →バレンタイン欲しい?? 『いや、ほんと、どっからバレンタインに……』 「近いじゃん。バレンタイン」 『えっと池沢先輩みたいなかっこいい人は彼女の一人や二人………いますよね?もしいなかったとしてもチョコの一つや二つ…いや数十個はもらえるのでは……』 自分で何言ってんだとは思った。もうわけが分からなくなってきた。 「なにそのモテ男設定。勝手にモテ男にしないでくれない?」 『実際そうでしょう。さっきの人だかりだって全員池沢先輩のこと見に来てた人ばっかりだったし』 「たとえそうだとしても僕は名字さんのが欲しいって言ってるんだけど」 『いやだから何であたし…』 「言ったよね、一目惚れだったって。もっかいハッキリ言うよ。 好きです。僕と付き合ってくれませんか」 強い眼差しで見つめられて、わけがわからなくなった。あれデジャヴ。返事なんかすぐできません。だってあたしは今日始めて池沢先輩のこと知ったんだもん。 でも、中学のときからずっと思っててくれたんだなって。 それを考えたらなんだか体全部がきゅんってなって。 『分かりました、バレンタインはあげます。罰ゲームだし…でも"付き合ってください"ってやつは待ってください。気持ちの整理したいです』 とりあえずはこのメモで。 連絡先と番号を書いて紙を渡した。 『すみません。携帯、家なんで』 「………、」 『どうしたんですか』 「うわ、どうしよう。嬉しい」 なんだこの初さ。見たことない。 あたしと池沢先輩を結ぶのはこの紙切れから始まったんだ。 END. |