今日は久しぶりに陣内家が集まる日。春休みだ。夏はおばあちゃんの命日、というよりも誕生日のほうでものすごく盛り上がる。でも陣内家に時期も季節も何も関係ない。
今日集まるのは夏希姉の卒業祝いのため。また今日も盛り上がって夜遅くまでうるさいと思う(僕はOMCやる予定だけど)
でも僕はこの集まる日が楽しみだっていうことに変わりはなかった。


久しぶりに会える日だから。






いつものように納戸にパソコンを置いた。いつもならすぐOMCをするけど、今はそれどころじゃなかった。早く抱きしめたい。ただあのなんとも言えない、僕を安心させるあの匂いの持ち主を(抱きしめたい)

納戸を直ぐ出て、いつも名前が使っている部屋に向かって歩いた。途中で楽しそうな話し声がした。けど気にせず歩みを進めようとしたときだった。


『あはは!そう言えばそんなことあったな!』

(・・・・・・・・は?)



………おかしい。ここは翔太兄の部屋のはず。でも中から聞こえるのは名前の声。


「………、」

中にずかずかと入っていくのも気が引けて、とりあえず戸の前に座って耳を傾けることにした。(なんか僕、変な人みたいじゃん)


『……』

「どうした?」

『いや、ちょっとうさぎさんが迷い込んだみたいだよ、翔太』

「は?うさぎ?」


何、なに、ナニ。何なの?え、うさぎとか入れるの?戸なんてどこも開いてないけど。


『ねー、う・さ・ぎ・さんっ!』

「うっ…わっ!!!」


うさぎの話から声が聞こえないと思えば、勢いよく開けられた戸。そして突然の名前の登場。
いきなり戸が開けられ、耳を近づけるように体を傾けていたからびっくりして前に倒れた。


『なーにしてんの?佳主馬』

「うさぎって…佳主馬の事だったのか」

『翔太の部屋の前で何してんの?』

「えっと…名前を探してて…」

『盗み聞きはよくないね。教育的に。ま、いいや・佳主馬も入る?思い出話』

「え、あ」

『ほら入った!』



うりゃ、と小さく声を出して中に入れられた。
いや、うりゃっていう掛け声可愛い、可愛いんだけどさ。

僕、蹴られてない?


『ではでは佳主馬も入り、引き続き喋り明かすぞ、翔太』

「てめーはいい加減呼び捨てやめろよ」

『あ?俺がやめるわけねーじゃん』

「そりゃそうだけどなあ……」


これ、どう見てもおかしいでしょ。
まったくもって話についていけない僕を、どうして真ん中に置く?
どうして2人がはさむ?


「そう言えばあん時は一緒風呂入ってたなあ……。いつだっけ?」

『確か俺が幼稚園とき!初めて陣内家に来た日だね』

「あん時は名前も可愛かったのにな〜。今ではこんなんなっちまって」

『こんなんってなんだ、翔太』

「いや、随分成長したな、と思ってよ」


ここら辺が。と翔太兄は自分の胸を指差す。
は?ちょっと待ってよ。成長したとか。
本気で一緒に風呂入ってたわけ?!
成長したとか分かるって事は今も入ってるかも知れないって事?!


『えっ嘘まじ?あんま変わんねえと思うけど。つーかいらねえし』

「いや、4つはあるな。いらねえとか言うな。女捨てんな女を」

『いらねえもんはいらねえ』

「名前がいらなくても俺は欲しい。おし、もっとでかくなれ。もんでやるか?」



何なの何なの何なんだよこの2人は!!
僕を挟んでなんつー話を…っ!
ていうか翔太兄もさ、もんでやるか?とか聞く?普通。

「…。名前、あのさ…」

『あ?』


だからだからだから、なんで僕を挟んで話すの。ああもう。翔太兄でも許さない。あとで一発……

「佳主馬、顔真っ赤」

「え」

『うわ、ほんとだ。まじで真っ赤』

いつの間にか2人共僕のほうを見ている。何、見てんの。ていうか翔太兄の顔見るとむかついてくる。
名前は僕と違って同い年でもないし中学生でもないけど、れっきとした女の子で僕の彼女。
そう、僕の。(翔太兄なんか見ないでよ。隣にいるのは僕だよ)

誰にも渡したくなくて、でも手が届かないみたいで。だから僕はぎゅうっと名前を抱き締めた。


『あれま』

「ちょっとやりすぎたんじゃねえ?」

『ヤキモチ、だな?佳主馬』

「べつに」


ふるふると首を横に振り、抱きしめる力を強くする。


『ああもう!大体胸が成長したのは佳主馬のせいだし!』

「はあ?」

「まじか、ソレ」


ぽかっと頭を優しくたたかれた。いや、身に覚えがない。

『後ろから抱き着いてる時さりげなく触ってくるし』

「いや、触ってた?僕」

『しかも、一緒寝るときなんか寝惚けて揉んで来るし、離してくれないし』

「え、それほんと?」


名前から離れ、顔を上げる。名前は頬を少し染めてる。うわ、可愛い。でも僕も恥ずかしい。


「待て名前。俺はそんなの聞いてねえぞ」

『いや、言えるもんじゃねえだろ。揉まれたとか。一応彼氏なんだし』

「言えよ、俺に」

「翔太兄はだめ」

言うが早いか名前の手を引き、部屋を後にした。





「馬鹿、何で言ってくれないの」

『いやだから恥ずかしくて言えないって。いい加減わかれよ』

「言ってくれなきゃわからない」

『分かってねえだろ』






思春期だけど




(言って欲しい)
((俺が言うのか。めんどくさい))
(いいよ、もう)






▼はんせい

黒様リクエストギャグ甘でした。
翔太が変態くさくなってしまいました。



Thank you!10000





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