僕の好きな人は僕の3個も上で、きれいで、大人で。
今日、もっと上に行ってしまう。
「ハッピーバースデー!名前ちゃん!!」
「おねーちゃん、おめでとー!!」
『ありがとうございます、聖美さん。ありがと、佳主美ちゃん』
今日は名前の誕生日。
いつものように池沢家、つまり僕の家で誕生日を祝う。
名前を祝うのは苦しいとかそんなのなんとも思わなかったけど、今日は特別苦しかった。
理由は自分でもなんとなくわかってた。
名前が好きっていう気持ちが日に日に強くなるたびに、この位置にいる自分が苦しくなる。
名前は高校2年生。僕は今年で14歳になった。
3コの間。
この空間がとても苦しかった。
名前はなんとも思ってなさそうだけど、これに不安を抱いてるなんて恥ずかしくていえない。
「僕、おなかいっぱいだから、部屋、戻る」
「あっ、佳主馬!」
きっと名前は大人だから僕を嫌いになって、大人な人と付き合ってしまうかもしれない。
「情けな…」
『佳主馬くん?入るよ?』
突然聞こえた僕の大好きな声。
今側に来られると、僕が弱くなっていくのを痛感する。
「……いいよ」
『佳主馬、どうしたの?具合でも悪くなった?』
違うよ。違う。そんなんじゃない。
好きなんだよ。大好きなんだよ。
大好きな名前の傍に居たいのに、居たいのに。
なのに。
僕は不安しかなくて。名前をいつでも守れるようなヤツじゃないし。
僕よりいい男いっぱいいるし。
「あのさ、……僕のこと本当に好き?」
『えっ』
そうだよね。やっぱりそんな反応。いきなり本当に好き?とか聞かれたら、今までの僕たちの関係は何だったんだ、みたいな。
ああ、男失格。
『佳主馬らしくないね。大好きだよ、ずっと。これからも』
「……うん」
『佳主馬の事だから、誕生日会して年の差でも気にしてたんでしょ?』
「ッ……!」
やっぱり名前には分かってしまっていたんだろうか。
見透かされたことが悔しい。
むしろ僕は気づいてほしくて気づくようにしていたのかもしれない。
『何年付き合ってるとおもってるの』
「……ごめん」
『なんで謝るの』
「ほんと……(ごめん、情けなさ過ぎて)」
『佳主馬』不意に呼ばれた声に今までうつむいてた顔を上げれば、今までにないとても優しい笑顔。
『佳主馬、自信ない?』
「な、にが」
『あたしを好きでいる自信』
「え」
『あたしはあるよ。佳主馬があたしをずっと好きでいてくれる自信』
だからさ、繋がれた言葉の先は言うことなく、そっと唇が重なった。
『"好き"に年の差なんて関係ないよ。ずっと好きでいてよ。ね、佳主馬』
▼あとがき
佳主馬がすごい弱気。
すみません。
やっぱり少しギャグのが書きやすいです。
20101226