一週間前に仕事を首になり、次の仕事を探して途方に暮れていたときだった。
突如として現れた有名な情報屋である折原臨也に新宿まで拐われた。
「何ですか、ここ」
見る限り物件の良すぎるというか物価が高いマンションだと思う。
多分セキュリティも万全だろう、多分。
きっとあの池袋の平和島静雄さえ入ってこなければ。
入って左側を見ればデスクがあり、折原臨也はそこへ向かいくるりとこちらを向いた。
「今日からここが君の新しい仕事場だよ」
そう言って迎えられたのが最初だった。
私が抗議しようと口を開く前に「あ、キッチンは君から見て右ね」と言われた。
「それが何ですか」
「ああ、仕事の内容はね――」
そして洗濯だの料理だの家事をほとんど押し付けられた。
その前に私は了承した覚えはない。
「…あの……折原臨也さん」
「臨也でいいよ」
「臨也さん、あの……」
「給料のこと?ああ気にしなくていいよ。それなりの額は払うしさ」
臨也さんは私に近づいてきてこれくらい、と言って耳元で値段を明かした。
それはびっくりするぐらいの金額だった。
もはやこれはベースな賃金を越して上乗せの給料が上回っているくらいではないか。
どうしてこんな金額がポンッと出てくるんだろう。
「じゃああの……一つ質問いいですか?」
「ん?別にいいよ」
「従業員賞与手当とかありますかね………?」
「え?ああ……ボーナスね」
一瞬驚いた顔をしてそしてくすくすと笑い始めた。
「てんぱってるんです。私、昔からすぐパニくって……」
「なーに、それ。まあ……君の働き次第だね」
そしてお腹すいたぁーと言ってソファへと寝転び、私に向かってニコリと笑いかけてくる。
作ってよ、とでも言ってそうだ。
いや、あの目は言っている。
私に拒否権はないのかと、とりあえず着ていた上着を臨也さんの邪魔にならないところに置いた。
冷蔵庫の中身を確認をして作れるメニューを考える。
「体があったまるものがいいなあ」とか言うから、また冷蔵庫とにらめっこ。
ここは安全に玉うどんでも煮てやろう。
料理ができあがって臨也さんのいるソファへと向かった。
いつの間にかうたた寝をしてしまったようで、ローテーブルにうどんを置き臨也さんを起こすことにした。
随分疲れているようで近くにあった紙たちが臨也さんの体の下敷きになっていた。
とりあえずその紙たちを引っ張り出し体を揺すってみた。
「臨也さん、うどん煮ましたよ。できましたよ。お腹鳴ってますよ」
「んー?ああ、ありがと。ていうか普通『風邪引きますよ』って言うんじゃない?」
「食べて下さい」
「あーはいはい」
臨也さんは体を起こして1つ欠伸をし、テーブルに向き直った。
「寝てないんですか?」
「まあね。最近忙しくてさあ………でも君がきてくれたお陰で少し楽だよ」
うどんに手をつけて少し啜ってから鼻水が出てくるらしく、ティッシュを手にとって鼻をかんでいた。
結構お腹が空いていたのか臨也さんは顔に似合わずガツガツとすすっている。
そして残るは汁だけとなったときに臨也さんは少し息を吐いてからこちらを見た。
「俺の元で働くにあたって俺の事は知っておいて欲しいから………」
「……はい?」
「折原臨也、23歳。一応永遠の21歳。今はここ、新宿に住んでいて時々池袋に行ったりする。職業は情報屋。大ッ嫌いなものはシズちゃんで、大好きなものはシズちゃん以外の全ての人間。いやむしろ愛してる!だからこそ、人間の方も俺を愛するべきなんだよねえ」
「……………は?」
「さあ、俺を愛してよ!俺は人間という君を愛してあげるからさ」
私の、上司(?)は随分頭がおかしいみたいだった。
これでも一応情報屋というところがむかついてきた。
臨也さんはにっこりと笑って両手を広げていた。
さあ、俺を愛してよ!素敵な企画に参加させて頂き、ありがとうございます。
臨也、誕生日おめでとう!
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DeJaVu間宮
2011.05.04
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