新一が言った「好き」がわたしと同じ意味の「好き」?
ううん。そんなのどうでもいい。
ただ分かるのは新一もドキドキしてるって事。

後ろから勢いよく抱きしめられている体と、触れた部分が熱を持ち始めているということ。



「うそ、でしょ……」

「バーロー、嘘でこんな大事なこと言えるわけねえだろ…。これでも嘘だって言うんなら何回だって言ってやる」

「ら、蘭は…」

「なんで蘭なんだよ」


新一はむすっとした顔を少しだけ見せて、わたしの体に回っている腕に力を込めた。



「蘭はただの幼なじみ。オメーは…その…特別…なんだよ」

「何、ばかなの」

「バカってなんだよ…!"名"探偵の俺がバカな訳ねーだろ!ってーか空気読めよ…!恥ずかしいだろ……っ!」

「いつも気障な新一に恥ずかしいとか、あるんだ……」



「おめーなあ…」といういつもと変わらない新一にさっきまでうだうだ悩んでた自分が嘘みたい。別に悩むことなんてなかったんだよ。新一が今までどおり接してくれない訳が無い。

両想いでも、振られたとしても。


「で?」

「え?」

「ちゃんと気持ちのこもった告白が聞きてーんだけど?」

「…!むっ、むり!」



ぎゅうっと抱きしめる力を強くして一段と体が密着する。



「いっ、いい加減離してってば……!」

「言ってくれるまで離さねえよ」

「ああもう…!」



やっとまともな君を見たような気がして、わたしは新一と晴れて両思いになれた訳だけど、恋人同士にはなってはいけないように思えた。

だから勢い余って好きだと言ってしまったのも今ではどうでもいいように思うのだ。新一がわたしを拒むようなことはないのはわかっていた。でも好きだと言ってくれるとは思ってもみなかった。

だけどこれで真正面から新一に「好きだ」とちゃんと伝えてしまったらケリがつけられない。

自分にも、蘭にも。


だから新一には悪いんだけどわたしのなかで押し込めて決して打ち明けない言葉にしよう。



「新一なんてだいっきらーい!」

「おめーさっき好きだって」

「新一の推理がね!」

「はあ?」

「だから離せあほんだら」

「あほ…っ」



するっと新一の腕から逃げてさっさと帰る支度をする。


いつか、伝えられるときが来るといいな。









20121013

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