泣いたって何も変わらないのに、止まらない素直な雫にわたしは呆れている。
わたしには逃げ場も居場所もないっていうのに。

言ってしまった。

新一に好きだと。好きなんだといってしまった。
どうしようどうしよう、頭の中をその一言だけがエンドレスに流れる。
蘭と新一をくっつける作戦だったのに、墓穴を掘ってしまった。

新一は心底驚いたような顔をしていたなあ。
そりゃあ今まで親しい仲だけの存在だった友人のわたしからそんな言葉を言われるとか、そんな風に想っていたとか思わないだろう。



「蘭に…っ、わるいこと、しちゃった……!」



息切れなんか気にしてられない。疲れてくる足も止められない。
後ろから聞こえてくる足音にわたしは追いかけられていると確証しているから。

わたしのことなんてほっといて蘭のところに行けばいいのに、新一はこういうところは律儀だ。
よく告白されて無視しないのは「自分の気持ち伝えるってのは簡単なことじゃねーからよ、こっちもちゃんと向き合って答えてやんねえと失礼だろ?」って口うるさく言っていた。

彼はわたしを捕まえたら真正面から目を見て、わたしにごめん、というのだ。

捕まったら最期。
わたしは新一のとなりにいられない。

ずっと新一のとなりがいいのに。




「こな、いで、よ………っ」

「っざけんな!」

「っ…!」



左手に何か触れたと思った途端後ろから圧迫感が体中に走る。



「……俺のこと、好きだって、本当か?」

「……うそだよ」

「つばさ」

「………うそだってば」

「好きなんだ」





え?





「俺、つばさが好きなんだ。だから行くなよ…っ」

「しん、いち……」





夢の中で鬼ごっこ









20121004

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