そして神様はわたしを喜ばせたいのか落胆させたいのか、高校二年に進学して初めての登校日にひどい衝撃を受ける。

同じクラス。それだけでもびっくりしたのにまさか隣の席までとは。
それがつい最近受けたわたしの中でのビッグニュースである。

運がいいのか悪いのか。
悩みの種の本人はなぜか不機嫌で。
なぜかこちらを睨んでいる。なんでわたしを睨むのだろうか。そっか、蘭と仲がよかったから妬いたな、こいつ。



「ね、」

「あ?」

「なんで怒ってんの?」

「別に怒ってなんかいねーよ。(オメーが蘭と俺のこと夫婦とか言うからだっつの)」

「そ、ならいいんだ」



ふ、と少しだけ安心して顔から笑みが零れた。新一怒ると怖いからね。よかった。




「…………っ(こいつ、可愛すぎんだろ…!)」




とにかくさわらぬ神にたたりなし。

新一はとにかくわたしにひたすら怒る時がある。中学の時に新一と二人でトロピカルランドに行った時。そういえばなんで新一は蘭を誘わなかったんだろう。そのときは別にいいんだよ!とかそんなんで済まされたような。

で、その時の新一ってばなぜか待ってただけなのにいきなり怒る。わたしを見て第一声が「お前なんつーカッコしてきてんだ!」って。別にいいじゃん。新一と行くからっていつも気にしない服装に気合いれてうんとお洒落したのにさ。

―――「お前なんかされなかったか?」
―――「んー、知らない男の人に話しかけられたけど無視した!(話しかけてるのわたしじゃなかったんだろうし)」

それを言ったら新一ってば黙っちゃって顔がすごく怒ってた。わたしなんかしちゃったのかなとか思って話しかけたけど新一は「別に」とか「いいから」とか短くどうでもいいみたいな返事ばっかり。


そのとき初めてわかったんだ。蘭を誘って断られたからほんとうはわたしと来たくなかったんだって。そう思ったらなんか悲しくなって苦しくなった。だからわたしは堪えられなくて新一が繋いでた手を振り切って走った。


トロピカルランドの中なんて全然わかんないんだけどただ広いその敷地内を走った。

気づいたらお昼を回ってて新一に悪いことしたなあとか後から後悔してきて新一に謝ろうと思って立ち上がったときだった。


―――「つばさ!」


新一はずっと探し回っててくれたみたいで名前を呼ばれたと思ったらわたしは新一の中にいた。


鼻を掠める汗の臭い。新一の匂い。近くに感じる新一の息。声。

ずっと、探してくれて、たんだ…。



ぎゅうっと強く抱きしめられる体はだんだんと熱を帯びて、改めて自覚させられる。








(あのときから新一のこと好きって想い始めてたなあ……)







20120922

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