あの日、俺は高校生探偵、工藤新一から小学一年生の江戸川コナンになった。
その日からつばさが消えた。
俺たちの前から突如としていなくなった。
どこかにいってしまったのだろうか。
つばさがいない。
隣で名前を呼んでくれない。
笑顔を向けてくれない。
手を伸ばしても触れることすらできない。
「どこに行っちまったんだ……!」
俺は蘭の家である毛利探偵事務所に転がり込んだが、毎日事件も起こるわけがなく、学校が終わるとランドセルを背負った小さくなった体のまま米花町を走り回っていた。
鶴原つばさの名前を探して。
「メールの返事はねぇし、電話はでねぇ」
だけど、着信拒否されてるわけでもなく、携帯を買い換えたというわけでもないことがわかる。まだ、完全に切れてねえんだ。
俺はあのときつばさに好きだとはっきり言った。
言ったんだ。
どこかに消えてしまわないように俺に繋ぎとめておきたかった。
あいつが言った好きなんだって意味は俺のことが好きだとかそういう意味じゃなかったってことなんだろうか。
告白をした次の日も普通に接してきた。
俺は自分の気持ちを伝えても尚、そばを離れていかないつばさが嫌いじゃないって、むしろ好きだって言ってるように見えて、ずっとそばにいようと思った。
だから一時も離れたくなかった。
そばにいて守ってやらねえと、って思ってた。
守れなかった。
大体あいつが俺のこと嫌いじゃないってわかってたとしても好きだって言ってたわけじゃない。
あのとき言った言葉は冗談だったのかもしれない。
俺のただの自惚れなのかもしれない。
だけど、あいつはこういうことを冗談で口走ったしない。
「頼むから黙っていなくなんなよ…!」
携帯を握りしめる力がいっそう強くなる。
「ぜってー見つけてやっから」
俺から離れるならそれは君が俺を嫌いになったときだけにしてくれ。
20121020
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