きっと今頃新一と蘭はトロピカルランドで楽しんでいることだろう。


カーテンの向こう、日はもうすでに登りきっていて青空が見える。
寝起きでまだ覚醒していない頭で一番最初に考えたことが、自分が一番離れなければいけないと思っていた二人のことだった。

そっか、もう二人のそばにはいれないんだった、と結論を思い出して、んーっと伸びをする。
そろそろ布団から出て準備をしないといけない。

見渡したわたしの部屋はダンボールの山。



今日、わたしは引っ越す。



もちろんみんなには何も言っていない。
言ったならきっと止めるだろう。
言ったならきっとわたしのために涙を流してくれるのだろう。

どうしてこうもわたしの周りには優しい人ばかりいるんだろう。
ついつい甘えたくなってしまう。

わたしはこうやって新しいスタートを切る。



なんて孤独なんだろう。なんてバカだったんだろう、と。





「なんで…こんなに好きになっちゃったんだろ……っ」




感情だけは素直になれないのに、目から流れる雫だけが正直なような気がして思わず目を瞑った。

突如として訪れる暗闇の中、いつも光をくれたのはあなたでした。




「ごめんね、ほんとは大好きなの」




こんなに苦しいくらい大好きなの。

新一、あなたは誰を見てるの。わたしに誰を重ねているの。
わたしは鶴原つばさなのに。

世界でたったひとりのわたしなの。


あのとき、声をかけてくれてありがとう。
中学の頃のわたしはあまりぱっとしない普通の子だったんだ。日常に呆れているほどの退屈さを新一が追っ払ってくれたんだよ。



だけどね、君の隣にわたしはいない。




あと少しだけ記憶の中にいさせて







20121019

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