上田わっしょいから一夜明けた朝。なんだか夢のような時間だった。珍しく私も佳主馬も素直だった気がする。「暗いから危ない」という理由で繋がれた手は熱を孕んでいて、少なからず私は期待に似た感情を抱いていた。(家に着いてからは無口な佳主馬に戻っていたけど)それでも佳主馬と過ごしたお祭りは本当に楽しかった。
そんな事を寝起きの頭で考えながら、少し早めの朝ごはんを食べている時だった。



「嬉しそうな顔してどうしたの?」

「へ?」

「昨日の上田わっしょいから帰ってきてずっと嬉しそうだよ」

「え、そうかな…」



お盆に朝ごはんを載せてひょっこり現れた夏希ちゃんにそう言われた。わりと顔に出やすいのは自覚してるけど、そんなにあからさまな顔してるのかな。小首を傾げながら夏希ちゃんを見つめると、得意げな顔をされて一言。



「佳主馬関連でしょ?」

「えっ!?」

「当たりかー。何があったの?」



にやにやしながら迫ってくる夏希ちゃんに少しだけ、ほんの少しだけひきつつ、隠してるわけじゃないからいいかと思って昨日の事を話した。「月が綺麗ですね」のところとかは流石に伏せたけど。青いねー、だの若いって羨ましいだの感想を述べる夏希ちゃん。貴女もまだ十分若いよと心の中で苦笑しながらお茶を飲んだ。そういえば今日の天気ってどうなってるんだろ。付けていたテレビを見ると、丁度天気予報士のお姉さんが映っていた。あ、この女子アナかわいい。


ー今日のお天気です。



「佳主馬はさー、」

「もーらい」

「あっ!」

「おはよう、佳主馬」

「おはよ。…余計なこと言わないでよ、夏希姉」

「別にー?まだ何も言ってないよ」

「どうだか」



私のおにぎりを横から掻っ払ったのは、お馴染みのタンクトップに短パンというラフな格好をした佳主馬だった。話を遮ってくる辺り、よほど私に聞かれたくないことだったのだろうか。私とは逆に、あまり思ってることが顔に出ない佳主馬は何を考えているかよく分からない。昨日のあの素直さはどこに消えたんだ。


ーそれでは信州地方です。今日は晴れるでしょう。気温がとても高くなりますので熱中症には充分注意してください。



「今日も暑くなるんだね」

「名前、ちゃんと水分補給しなよ?」

「佳主馬もね」

「なーに、二人して」

「ふふ、秘密」



「ねー」と顔をあわせて笑った。外では徐々に蝉が鳴き出していて、天気予報で言っていた通り暑くなるんだろうなと思いながらまた一口、おにぎりを食べた。



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遅くなりました…すいません…
次は海になると思います!

碧子さんよろしくですー!


20121029 青谷


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