時が過ぎるのは早いもので、あのとっても綺麗だった花火も最期を迎え、わたしと佳主馬の間には沈黙が流れる。(き、気まずい……)
さっきから佳主馬は一言も喋らない。
あの「月が綺麗ですね」の解釈をわたしがいいようにしていたのかもしれないし。 佳主馬はただ本当に月が綺麗だと思って口にした言葉だったのかもしれない。 わたしが一方的に気持ちを押し付けてるのくらいわかる。
「あ…」
佳主馬はただただ空を見ていた。 吸い込まれそうなその瞳で、打ち上げ終わった花火をまだ見ているかの様に空を見続けていた。
わたしはその艶っぽい佳主馬の横顔を知らない。
その寂しそうに空を見つめる瞳もわたし、今まで見たことない。
「かず」
「明日さ、」
「?」
「海、行きたい」
「…!」
少し照れたように頬を染めてこっちを見た佳主馬の左目は見えなかった。 だけど、佳主馬が言った「月が綺麗ですね」の意味も好きです、愛していますと告げられていたものだったなら、わたしは嬉しいことこの上ない。
さっきまでの花火の綺麗さに向けていた熱も、買ったかき氷が手の熱で溶けてしまっているのもきっと気のせい。
佳主馬がわたしを見つめて、まるで「好きだ」と視線が言っているのも気のせい。 全部わたしの気のせいで妄想なのだ。
だから今は佳主馬と一緒にいられるこの夏を楽しみたい。
「なに、名前行きたくないの?」
「えっ」
「それとも僕と一緒なのがいや?」
「いく!行きたい!佳主馬と二人で!海!絶対!!」
「ははっ、そんな勢いで言わなくてもわかったから」
肩を小刻みに震わせ佳主馬は笑い始めた。 わたしは少し安堵の息を漏らし、「笑うな」と言って一緒に笑った。
「そろそろ帰ろう」
「うん」
さり気なくわたしの手をつかみ歩き始めた佳主馬はいつもどおりわたしが大好きな佳主馬で、せっかく引き始めていた体の熱もまた上昇する。
やっぱり、大好きな佳主馬が一番だ。
溶けてしまいそうな言葉を
------- はい、間宮です。 一回消えたネタです← 泣きました。
最初書いたほうがもっとしんみりしててわたし的にすきだったんですが!
残念です。
次は青谷さん!
20121008
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