「どぅええええっ」
どうも、こんにちは。つばさです。どうやらわたしはトリップしたようで、戻れるまで奥村兄弟の部屋で寝泊まりさせていただくことになりました。これはこれはあぶないのではないか?
「いやいやっ、だめっ、もしものことがあったりしたら」
「ありえませんね。僕に限っては絶対(人のことホクロメガネとか言いやがって)」
「雪男酷い………」
「あと問題なのは兄さんだけなんですが、」
ここで立ち話もなんですから、と部屋へと案内された。
「あれは?他の部屋はダメなの?」
「こんなことはまったく予想外のことだったので、掃除がされていないんです。多少は大丈夫だと思うのですが、湿気と埃臭さがあるかと」
「それはやだな」
ふむ、と顎に手を当てて考える。なんだかなあ、不思議体験すぎるのだ。雪男も雪男で冷静すぎる。わたしのことを疑問に思わないのだろうか。
「ここですよ」
「兄さん、勉強やってる?」と声をかけて入っていく。わたしは少し事情を話すから待っていてくれと言われた。
あの燐のことだ。きっといろいろと突っ込んでくる。わたしはうまくまとめて話すのが苦手だ。ここは口が上手い雪男に任せるのが、ベストの選択なのだ。
「もう、大丈夫ですよ」
「あ、うん」
ゆっくりと二人のいつも暮らしている、その部屋に足を踏み入れた。わたしはいつも漫画で、アニメで見ていたそこに、足を踏み入れたのだ。自ら、そこに。
「う、っわー!ほんとにある!よいこの悪魔薬学!」
「あっおいっ!………雪男、こいつ?」
「そうだよ。僕たちより2つ年上なんだって。僕びっくりしたよ」
「鶴原つばさでーす!よろしくね、燐。」
「おっ、おう」
雪男が癪にさわるような酷いことを言ったけれど、ここは燐にも会えたと言うことで聞き流してあげることにした。
なんてわたしって大人なんだろう!
「てことで兄さん。しばらく鶴原先輩はここで寝泊まりするけど、間違っても教育的によくないことはしないでね」
「しっ、しねえーよ!こんな色気ねえ年上!」
「あ?」
「いやっ、えっ、あの」
すんません………と縮こまる燐はサラッと酷いことを言ってのけた。燐、ひどくない?年上にひどくない?
キッと目付きを鋭くすると燐はギクッと体を揺らした。
とりあえずわたしはなんとか打ち解けた感じで、燐と雪男の三人で夕飯を食べ、部屋でたわいもない事を話した。
雪男が途中で任務だと部屋を出ていってから約三時間。時計の針は3時を過ぎていた。
「雪男おそいなあ……」
任務にしては明らかに遅いのがわかる。そんなに大変な任務なのだろうか。まだ近いところだから大丈夫だとかは言ってたけど…。
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