何もしないでここに突っ立っていても、ここがどこかを知る術がないし、きっと延々と時間だけが過ぎていくだろう。とりあえず歩いてみることにした。


一体どこなのだろう。見渡す限り、緑がたくさん。環境はいいらしいけど、明らかここは幽霊屋敷かってくらい人が近寄らなそうな立地条件ではないかと思う。


というか人の気配が全くない。


本当にここはどこなの、と不安が募るばかり。わたしはとにかく前に進むしかなかった。

丁度角に差し掛かったとき、前の方から微かに足音が聞こえた。人気がないのに足音………。うそでしょ。わたしはゆっくりと目を瞑って気持ちを落ち着かせようとした。
そうだよ、きっとここに誰かいたんだよね。恥ずかしくて出てこれなかっただけ。決して幽霊とかそんなんじゃないんだよ。首がなかったりのっぺらぼうだったりはしないんだよ。だってここは現実。てことはこの世にそういった類いのものは存在しないんだ。ってあれ、ここってわたしの存在する場所なのかな。違う場所なのかな。そしたら幽霊とか出るんじゃないかな。あれ、じゃあ前からした足音って。

足音、ち、ちかくない?

あ、止まった。




「あの、「ぎゃああああああああっ!!!!!やめて美味しくない、近づかないで!食べないでっいやあっ!あっち行ってえええっ!!」

「あの、あなたは」

「へ?」


あれ、よく見ると足がある。それに聞いたことがある声だった。

メガネに、ホクロ。いち、に、さん。優しく微笑む、くそイケメン。

雪男じゃんかよ………!


「僕は幽霊じゃありませんので大丈夫です。どうしてここに?普通の人なら入ってこない場所なんだけどなあ」

「あああの」

「はい?なんでしょう」

「ここって、正十字学園で合ってたりします?」

「そうですね。ちなみにここは旧男子寮ですから、人はいないですよ。あなたはどうしてここに、」


それ以降の雪男の言葉は耳に入ってこなかった。わたし、トリップしちゃったんだ。今日見ようと思ってた青エクの世界に。しかもこの雪男と燐が生活している旧男子寮に。


「わたしはただ、家に入ろうと鍵を挿して戸を開けただけなのに、ここに。帰れないのかな?でもいいかな。雪男に会えたし」

「僕の名前を、どうして」

「細かい事は気にすんな、ホクロメガネ!わたしは鶴原つばさ。ちなみに18ね!彼氏はめんどくさいからつくらない派!よろしく」

「ホクロメガネじゃないですから………っ(兄さんみたいだな)」









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