陣内翔太、21歳。一応これでも警察官だ。ばあちゃんに「おれ、警察官になり、たい」と勇気を出して告白したとき、ばあちゃんは何も言わず頭を撫でてくれた。そして一言。「翔太は立派に育ったねぇ」と優しく笑ってくれた。
これが、俺の誇りだ………と思ってる。

そんな21歳、悩みがある。

一応俺にだってかの…じょくらい、いる。そりゃあもうかわいいくて愛しい彼女。
名前は鶴原りん。歳は18。夏希の友達だかで中学の頃から夏休みや長期休暇に入ると、毎年上田のこの陣内家にやってくる。
そんなこんなで色々あって二年前から付き合う仲になった。

18歳と言うこともあり、年の近いやつとか年下のほうがあいつも安心するのはわかってる。佳主馬にだってよく話しかけてる。
だからそんな日常のような一部なんて気にしないつもりだった。なのに。
今日に限って夏希があの健二とかいう野郎と出掛けてる。だから自然と佳主馬と一緒にいる。

かれこれ三時間。ずっとあんな調子だ。

俺だっていい加減りんと話したいしりんを独占したい。
そんな俺の気持ちなんかりんはわかっちゃいない。あいつのことだ、絶対。だって本人自覚なしの天然鈍感女だから。

佳主馬のやつだって俺達が付き合ってることくらい知ってる。あいつは言わなくても雰囲気で察してた。もちろんみんなに言う前からだ。
それになんたってここ最近の夏は暑すぎて困る。りんと佳主馬に対してイライラして、暑さは容赦なく増していく。

それに………なんだか、あた、まがボーッとして………きやがっ………………た。



「翔太さん!?」

意識が途切れる前に見たのは駆け寄ってくるりんの姿。
俺、なんかしたのか?





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今日は夏希がいなくてつまらなかった。しかも翔太さんは仕事から帰ってきたばっかりで疲れてる。
だから佳主馬くんに私の知らない翔太さんを聞くことにした。



「翔太兄はりんさんが来る前までは『夏希ィ、夏希ー!』ってうるさかったんだよ。りんさんが来た日から言わなくなったけど」


「へー………全然知らなかった」


「………一目惚れだったとおもうよ」


「え?!私にっ?」

翔太さんの知らないところを聞けて、でも佳主馬くんの知らない部分も知ってて。
なんだか楽しくなってきてしまった。

話が段々盛り上がってきた時だった。後ろで何か音がした。振り返ったら翔太さんが倒れてて、急いで駆け寄った。

佳主馬くんに手伝ってもらって翔太さんの部屋に運んだ。この暑さだ、熱中症に違いない。
翔太さんに限って熱中症なんてあり得ないと思ったけど、早く冷やしてあげないと、と氷と水を取りに広い廊下を走った。






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(なんだ………冷たくて気持ちいい………)


うっすらと目を開けると、心配そうにこっちを見てるりんがいた。



「りん………?」


「翔太さんっ」


「いでっ」



いきなりりんが抱きついてきて、いきなりだったからびっくりして少し苦しかった。



「よかったあ………」



ふわあ、みたいな効果音が付きそうなくらい安心して優しく笑ったりん。
よく見ればここは見慣れた俺の部屋。



「りんがここに運んでくれたのか?」

「私一人じゃさすがに無理だったから佳主馬から手伝ってもらったの」

「佳主馬………?」



俺はわかりやすい方だと思う。声に怒気が混ざったことにりんも気付いた。

俺は心底ムカついて体を思いっきり起こす。それと同時に頭の上に乗せられてあったタオルが落ちる。
その勢いに任せてりんを押し倒す。
捕まえたんだ。離すもんかよ。ずっとこの手の中に納まっていればいい。俺だけを見てればいい。



「しょう……んっ」



もう何も考えたくなくて口を塞いだ。りんの全てが好きで、独占したい。



「んん……っ、はあ」



お互いの口から、鼻から、息が漏れる。


暫くして口を離すとりんは少し涙目になっていた。
しまった、やり過ぎた。



「わりぃ、あの」



急いで謝ろうとすれば少し顔を赤らめて「翔太さん、私の事一目惚れだったんですね、私もです」とへらっと笑った。
ああもう負けた。



「わりぃ、りん。佳主馬に嫉妬してた」

「えっ」

「だから」





俺だけを見てくれよ。
そばに、いてくれよ。










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Lukaさまより頂きましたリクエスト、「佳主馬に嫉妬する翔太」でした。
翔太あまり書いたことがないのでgdgdでしたがなんとか書き終える事ができました! 
翔太はあんなんだけど彼女には凄く優しいですよね、きっと。
Luka様、企画参加ありがとうございました!


20110813
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