ポケットの中で携帯が震えた。
携帯を取り出して気怠げに画面を見てから眉間に皺を寄せる。


「最近、俺の知らないところで情報が出回ってるのはどういうことだろうねえ………」






03









本当に最近、自分の知らないところで情報が出回っているのが気に食わない。
どこの誰だか知らないが勝手な真似をされるのはこっちとしては都合が悪いし嫌だ。

四木さんから聞いた話しだと『ランブ』というハンドルネームを使っているやつらしい。
ランブって何だ?乱舞………?乱す…舞う…。淫らに舞うのか?(さすがに違う)ああいやらしい。真昼間からウインナー食べてるどっかの誰かさんみたいだ。


「ほんと、気に食わない」


パチンと音を立てて閉じた携帯を無造作にポケットに突っ込んだ。
それを合図のように後ろから飛んできたのは……サッカーゴール。


「あーもう。ほんとやだなあ」














わたしの今の現在地は二階廊下。そして今しているのは観察。
あ、言っとくけど現在進行形だ。

わたしは今窓の外で繰り広げられている喧嘩というか戦争というか……まあそんなやつをずっと見ている。

見えるのはあの折原くんと平和島静雄で、平和島くんは折原くん以上に有名だった。


(あの喧嘩は折原くんが悪いのか平和島くんが悪いのか…)


どっちもどっちだな、と片付けたときにどっかのクラスの教室にいたらしい先生が声を上げた。


「いい加減あいつら止めれる奴はいないのか?!」


視線を窓の外に戻せば、どこから持ってきたのか平和島くんの手には道路標識が握られていた。
対して折原くんは薄ら笑みを浮かべて何か喋っている。



「あーあ、まったく…止めればいいんでしょ?」


わたしは窓を開け桟に足を掛けて勢いよく飛び出した。後ろから叫び声が聞こえたけど気にしない。

地面に着地して目指すは二人の間に滑り込み。
その前に何を話してるのか気になるから観察しようかなと平和島くんが投げたらしいサッカーゴールに座って観察することにした。







「ああほんともう何でシズちゃん空気読んでよ。俺さあ思い通りにいかないことが起きて、今すごい苛々してるんだよねえ」

「知るか!全部手前の思い通りになんかいくかよ!!!」

「うるさいなあ…ちょっとさあ黙ってよ」


折原くんの目が細められたとき手にはナイフが握られていた。
わたしは段々と面白くなってきて自然と口角が上がった。
わたしが色々と情報を回していることに気づき始めたのか。
(独自の情報網ねえ。そういうこと)


観察していると平和島くんは堪えられなくなったみたいだった。(単細胞脳とはそうか、こういう奴をいうのか)

わたしはそこからできる限りの速さで走って、折原くんに向かって道路標識を振り上げて走っていく平和島くんの手首を掴み、軽く捻っても無駄みたいだったから思いっきり捻って道路標識を落とした。


「いっ…!」

「あ、ごめん。思いっきりやっちゃった。わたし力結構あるんだよね、はは」


と謝罪しているときに飛んできた数本のナイフ。
そのうちの一本を平和島くんは歯で止め、わたしは左手の指の間で二本のナイフを白刃取り。
最後の一本は右手でそのまま受け止めたから、鮮血が軽く飛んだ。「いったいなあ……。折原くんナイフはやめてよ」

「シズちゃんの力の方が怖いけどなあ」


折原くんは目を見開いたけどすぐいつものような目に戻っていた。


「手前何し…ってナイフ大丈夫か?!」

「大丈夫大丈夫。きっと大丈夫」

「馬鹿野郎!何で出てきた!」

「知るかばか。先生が止めてって言ったから止めに来ただけだよ」

「静雄…!」


すごく心配そうにしてそして自分の責任とでも言いたそうな平和島くんを呼んだのは、わたしが接触したかった岸谷くんだった。



「新羅!頼む、こいつナイフ刺さってんだ」

「ええっ?!何やってんの?」

「だから止めに来ただけだってばー」

「いいからおまえは黙っとけ。新羅頼む」

「わかったよ」



わたしはそんな会話が交わされる後ろで面白くなさそうにしている折原くんや、止まった喧嘩にほっとしている先生には気づかなかった。











ほんと、おもしろくない




とりあえず岸谷くんに接触しなきゃいけないんだから。


過去を聞きだすのって楽しいよね。



20110409


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