授業中ということも気にせず折原くんはわたしに話しかけてきていた。

正直鬱陶しいと思っていた。

だって折角いい席だというのに情報を集める暇すらない。
かといって転校初日からサボるのもアレだ。

どうにか折原くんから逃げる術を探すことに専念しようとした。

そんなときに考えさせる暇を与えることもなく折原くんからある質問をされた。


それはもう意味わかんない質問。




「ねえ、君はあの世って信じる?」



本当にこいつは情報屋なのだろうか。
どうしていきなりあの世の話になるのかわけが分からなくて一瞬思考が停止した。






02





「なんでいきなりあの世?」

「いいから答えてよ」

「折原くんが死んで確かめてきてくれたら信じるよ」

「死んだら報告のしようがないし、大体どうして俺が死ななくちゃいけないのかな?俺は君…つばさに聞いてるんだけど」



名字呼びすっ飛ばしていきなり名前呼びときた。
これまた折原くんの情報に加えておこう。



「だからって何で信じる信じないを赤の他人であるわたしに聞くの?」

「赤の他人じゃないよ、もう友達。だから答えるだけ答えてよ。思ってることでいいから」




そしてこの男に何を言っても無駄ということ、口だけは達者ということも加えておかなければと思った。

こいつはこういうやつなんだ。



「わたしは―――」















大きく息を吸ってゆっくり吐き出していく。
晴れた空が眩しく照らしている。

落ち着きがないと感じたのはきっとあれだ、折原くんのせいだ。



「いい天気っ」



フェンスへと近づいて池袋を眺め、緩んでいた口元をきゅっと締めた。

この池袋の中では結構名が知れてるみたいだった。

中学のころは来神中学で生物部の副部長をしていたみたいだった。
何だあいつ、エスカレーター校か……むかつくなあ…。

そして気になるのは中学のころにナイフで友達を刺して補導されてる事件。
あんな気味悪いほどの爽やかな笑みを浮かべて、落ち着きのある奴が人を刺してしまうのだろうか。

フェンスに左手を掛けたと同時にお腹が鳴った。




「………ごはん、食べよ…」




いまさらだけどわたしはサボってなんかいない。今は昼休みだから屋上に来ただけ。

さらに高いところへと高いところへとタンクのある方へと登った。



「池袋、実に面白いね……」



折原くんは気味悪くて読めない奴だけど、と心の中で付け足す。

声に出して誰かに聞かれでもしたら困るから。


とりあえずこれからやることができた。帰ってから暇しなくてよさそうだとウインナーを口に運ぶ。

中学のときの生物部部長、岸谷新羅。

折原くんにナイフで刺された張本人は、同じ来神高校らしいということがわかったから接触を図らなければ…



「弁当にウインナーって、真昼間から元気だねえ」

「……折原くん」

「何でいるの?って顔をしてるね。つばさが答えないで逃げるからだよ」



突然現れてもう一本のウインナーを食べた。
飲み込んだ後に口をぺろりと舐めるその仕草、やめたほうがいいよ折原くん。



「わたしはあの世っていう言葉自体いらない。死んだら無。それでもこの答えがおかしいとか間違ってるとかいうなら……」



もう一人の情報屋に聞いてみなよ、なんて言える筈もない。

だって私がその情報屋だから。









君の情報とランデブー







「で、さっきの続きって何?」

「なんでもない」

「いいなよ」

「折原くんが死んで確かめなってハナシ」

「結局それに戻るのかよ」

20110402


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -