夜明けが近付くにつれ、街も起きてくる。 そんな池袋にまた一つ非日常が降りてきた事にも気付かずに。 01 池袋某所。 わたしは荷物も大方片付いたので池袋の街を歩いていた。 何だ普通の街じゃないかと思っていた矢先、二人の男子が走ってくるのが見えた。 すれ違ったときに見えたのは学ランというか短ランの黒髪の男の子とブレザーを着た金髪の男の子だった。 あのブレザーには見覚えがある。わたしがこれから通う来神高校の制服だ。 じゃああの金髪の男の子は同じ学校なんだなと思いながら見ていた。 後ろ姿を見て考えていたのは、先程すれ違ったときに金髪の男の子がすごい剣幕だったこと。 きっと追いかけっこだ。リアル鬼ごっこでもしてんのかなとか思いながらそのまま池袋を詮索した。 今日の空は落ち着きがない。 よく……晴れてるのに。 「埼玉から来ました。鶴原つばさです。今日からよろしくお願いします」 軽く頭を下げクラスを見渡す。 一番後ろの席が三つほど空いている。そのうちの一つはわたしの席だろうかと空いている三つの席を見た。 一つは廊下側の一番後ろにあり、もう一つは窓際に二つ隣どうしで置いてある。 「じゃあ席は窓際の一番後ろだ」 担任が指差した席、丁度角の席だった。 こちらとしては好都合だが隣の席のやつがどういう奴なのか把握しきれていない。 鈍い奴だと助かるんだけどなあ………とか思いながら席に着いた。 窓の外に目を向けてから自分の携帯へと視線を移し指を走らせた。 「へえ、池袋の情報屋、ねえ……」 わたしに勝てる程の情報網、そして情報量があるのか知りたくて仕方なかった。 うん、今日はいい一日になりそうだ。 前言撤回。 三時間目に差し掛かる休み時間、一人の男子生徒が教室へと入ってきた。 (あれが、折原臨也………) ああもう細っこいなよっちい男だなあと思いつつ舐めるように見た。 短ランに黒髪と言えばつい最近池袋の街中ですれ違ったじゃないか。 あのリアル鬼ごっこ現場を目撃しただけなのだか。 そして折原臨也を目で追ってやってしまったと思った。 そうだ、この不自然に空いている席は一体誰のなのかをまだ調べていなかった。 カタンと隣で音が鳴る。 やっぱりやっぱりやっぱりこの席は池袋の情報屋である折原臨也の席だったのかと、一人頭を抱える。 池袋の情報屋に会うために埼玉から来て、じっくり観察してからそいつを追い詰めてやろうとしたはずかこれでは逆に観察される側。 あああ最悪。 「ねえ」 「………」 「あのさ」 「…………」 あくまでも聞こえないフリ。 わたしは知らないんだってば。 「あのさあ!」 「………、」 大きい声を出したのでさすがにこれ以上は無理だと思い、ゆっくりと首をそちらに向けた。 そしてすっごいすっっごい爽やかな笑みが飛び込んできてそれから。 「君、転校生?っていうか俺呼んでたのに無視してたよね?聞こえなかった?君は耳の病気でも持ってるのかなあ?」 「………聞こえる。余裕で聞こえるからお願い、大声で話すのやめて」 「俺は折原臨也。君は鶴原つばさで合ってるよね?」 池袋に舞い降りた一人の女 (これもまた非日常の始まりだった) わたしの携帯に写し出された情報屋の名前は折原臨也。 そして隣にいるこの男の名も折原臨也。 20110401 |