あの転校生のつばさが自分とシズちゃんの間に割って入ってきたとき、力を緩めるのを忘れた。 忘れたというか忘れさせられたというか。 あの子の目は俺でも見透かせないものをいつも見ているような、そんな瞳だった。 06 現在池袋在住。 あの事件の後、先生がグラウンドに降りてくる前にずらかり、学校から家に着いたところだ。 家までの道のりでも顔にできた傷たちを人は見て見ぬふりをする。 変に病院とかに連絡されるよりはマシだけど。 ソファに体を沈め一息つくと力が抜けたように重かった。 少しぼうっとどこを見ているかもわからないような顔で、どこかをひたすら見ていた。 なんなんだ、あの目は。 自分に対してあんな目をするやつは初めてだった。心底イライラするような、でも彼女に対してそういった感情ではない何かがあった。 「……なまいき」 年上が年下の餓鬼にむしゃくしゃしてるような。 今の自分の考えはそれしかなかった。 くしゃりと前髪を掴み一度体を起こした。 何もやる気が起きないけど、今は気になって仕方がない。 パソコンをスリープ状態から起こし、首を一回鳴らしてパソコンと向き合った。 「調べてあげるよ、君の事」 池袋の情報屋、なめてもらっては困るからね。 そう心でほくそ笑み、指をキーボードに走らせた。 笑って嘲笑われて、ワラう。 20110702 |