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名前さんは「も、むり………」その言葉を吐いた直後に倒れてしまった。熱中症かなとか思ったけど、か細い声で「かずまとちゅー、ちゅー…」とかなんとか言ってるから大丈夫なんだと思う。
ていうかなんなの、名前さんそんなこと言わないでよ。僕が恥ずかしい。
きっと意識はどっかに飛んでいて上の空。
そっと名前さんの体を起こして、僕が名前さんを後ろから抱きしめるようにして座る。
やっぱり女、ってことなのかな、会った時から思ってたけど細いな。
きゅ、と少し腕に力を込めた時だった。
納戸の外から足音が聞こえた。
「あ!佳主馬くん!」
「お兄さんなんで来たの」
「夏希先輩からOZが大変だって聞いて……って佳主馬くんは何してるのっ?」
「別に」
健二さんから名前さんを遠ざけるように少しだけ僕の背中を向けた。
相変わらず名前さんは「ちゅー……かずまと…」とか何回もくりかえしてる。
いい加減黙ってくれないかな。(塞いでもいいかな)
そしたら今度は夏希姉と翔太兄まで入ってきた。何、なんなの。「健二!」次はパソコンのほうから声が聞こえた。健二さんの友達、らしい。
―――さっきの奴は人間じゃない!
「人間じゃない!?」
僕、好きだ。
好きだと自覚したらもうあきらめないで突っ切るだけだからね。覚悟しといて名前さん。
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