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健二くんが夏希姉の偽装恋人だとバレて、健二くんはニュースにも出て大騒ぎ。納戸にみんな押し寄せてくるし、佳主馬は相変わらずだし。
オレはそんな佳主馬を元気づけてやることもできず、ただただ、隣にいることしかできない。目尻が熱くなる。馬鹿、女か。女だけど。
オレはそんな女々しく生きたいんじゃないよ。
でも佳主馬はもっと悔しいし、泣きたいんだろう。
簡単に泣かないのが佳主馬なんだろうけど。
きっと今は健二くんが栄おばあちゃんと話している真っ最中だろう。
納戸の空間にはオレと佳主馬の二人。
少し入り込む太陽の陽。
自分でも無意識だったらしい。佳主馬の右手を握ってる左手が震えていたようで、佳主馬はこちらを見て目を見開いていた。
「名前さん、」
『………』
「なんで、…泣いてるの」
『佳主馬が泣かないからだよ』
そうだ、佳主馬が泣かないから代わりに泣いてやる。その代わりオレが悲しくて悔しくて泣かないときは、佳主馬が代わりに泣いて。
佳主馬はさっきまでの暗い表情はどこに行ったのやら、呆れたような顔して右手をオレの左手の下から引き抜いた。
なんで逃げるのさ、そう開いた口は次の佳主馬の行動によって閉じられた。
「僕じゃ…頼りにならない、と…思うけど」
『っ、か、ずま』
「一人で泣かないでよ」
ぎゅっと佳主馬の体温に包まれていた。
君の体温で包まれた暁には
((ぼぼぼ僕何やってんだ…!!名前さん抱きしめちゃってる…!!))
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