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物理部の部室に佐久間の耳に聞き慣れた声が響いたことだと思う。
《ぼぼぼ僕じゃないよ!!》
犯人として指名手配されてしまった健二くん。いや、本当は健二くん悪くないんだけどね。
原作無視っちゃうと、なんかオレの存在消えちゃいそうじゃん!?だから黙っておく。
「ーだよな。動機も度胸もないよな。」
《わかってるなら何とかしてよ…っ》
今にもかすれそうな声で佐久間に縋る健二くん。(あ、この健二くんやばい)
「無理。パスワードが書き換えられてて管理棟に入れない」
そしてそれさえも佐久間の一言で虚しく散る。
《OZのセキュリティシステムは世界一安全じゃなかったの!?》
『OZに聞くのが一番早いよ、健二くん』
OZのアカウントを取るときや、宣伝で言われていること。これは確かじゃないのかと、健二くんは慌てて言った。
*****
佐久間がぽつ、と話し始めた。
《昨夜、変なメールがばらまかれた》
「変なメール?」
《OZのセキュリティは2056桁の暗号で守られてる。そいつが流出したんだ》
佐久間は開いているパソコンの画面を見つめながら話していると思う。確かこの場面なら覚えてる。記憶力いいね、オレ。
「2056桁…。さ…最初の数字は?」
『《8》』
佐久間とオレが同時に告げる。
そう言われた健二くんの顔はみるみるうちに青ざめていくのが分かる。
なにこれ、はたからみたらやばいよ。
《世界で10億人っていう利用者(ユーザー)がいるんだ。そう簡単に解ける暗号じゃない。それを誰かが一晩で解いちまったんだ》
「…それ…僕です…僕が解きました…」
《ーは?》
「何かの問題(クイズ)かと思って…。解いて返信した…」
《このバカ!!どんだけ数字オタクだよ!》
受話器から佐久間の怒鳴る声が丸聞こえ。
「スゲェ」
『いや、感心してる場合じゃないと思うんだけど』
佳主馬はこんなときもやはり素晴らしいくらいの落ち着き。
(オレにもくれ)
《とりあえず仮アカ取っといた。しばらく使っとけ》
「と…とにかく、中で犯人捕まえないと…」
ポコンと音を立ててOZにログインした、健二くんのアバターが現れる。
{ケンジ!}
「…これが僕?」
{犯人は中心部だ。急げ!}
{う…うん!}
犯人を捕まえるためにアバターを走らせる。
(犯人、わかってるけど、いえない)
不格好な愛らしいアバター
((オレはここにいて何ができるのかな)はぁ)(名前さん?)(ガキ共を黙らせるか)(何いってんの?)
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