夏戦 | ナノ


12



OZにログインしようとパソコンを開く。既に隣で佳主馬がログインしていたから、やっぱりやめることにした。



「ログインしないの?」

『ああ……うん。佳主馬の見てることにする』



(だって今ログインしたら、ね)
これから何が起こるか分かっている自分が嫌だ。
自分だけ未来が分かっていて、何もできない。ただの、傍観者。
『つらい』よりも『悔しい』なんて言葉が渦巻いてる。
(こんな自分、嫌いだ)



「何これ。これって昨日のお兄さん?」

『……これは健二くんだねー、うん』




佳主馬のパソコンの画面に映し出されているニュース。
そこには見事にモザイクをかけられた健二の顔が。
指名手配だけはされたくないと思った。いや、されないけど。
(これ、全然かっこよくないね、うん)
すると廊下を走ってくる音が聞こえた。


「いた!パソコン貸してくれないかなっ?!」

「これ、お兄さんがやったの?」



佳主馬は納戸にやってきた健二のほうを向き、事実を聞こうとする。
……が、健二はパニくっている。



「いいからパソコン貸して!!」

「言い方がダメ」



すぱっと吐き捨てられた一言に、健二は目を開いて一呼吸を置いた。




「……すみませんがパソコンを貸してください……!」

「ん」

「あっ、ありがと!」



パソコンを横にずらし、承諾した。健二はオレの隣でパソコンのキーボードを打っていく。
どうやらOZにログインできない様で。



「あっ、あれ?」

「何焦ってんの?」

「誰かにアカウント、乗っ取られたみたいなんだ!」

『それ、なりすましだね』

「どうしよう……」

「サポートセンターに連絡」




焦る健二に、麦茶を飲みながら言い放つ。
佳主馬はその麦茶を”飲む?”と聞いてきたが、間接キスを想像してしまい、断った。



「それだ!!」



健二は携帯を取り出し、素早くボタンを押した。
プルルル…と鳴った後、音が切れて健二が話し出そうとしたが、OZのサポートセンターから認証できないと一刀両断。



「かっかかっかからないよ!!」

『とりあえず健二さん、落ち着いて、落ち着いて』



「小磯君?」

「うわあっ!!」

「落ち着きなって」



ガタガタとパソコンを置いている机が揺れる。
健二くん、落ち着かないと話が進められないよ。
ここまでの動揺っぷりだとは予想外だなぁ……。




第一難問まであと少し




(佳主馬、健二さん相手にしてらんないよ)(それ、お兄さんに失礼だよ)(いや、別に本当のことを言ったまでよ)(何気毒舌なの?名前さんって)(あの、ふ、二人とも酷い言いようだと思うんだけど)

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