09
「陣内家現当主の栄おばあちゃん」
どうやら原作にトリップした様で。夏希……先輩が紹介を始めた。
この場に佳主馬がいなくて寂しい。オレも納戸に逃げたい。
「覚えた?」
「う……ん。どうかな……」
「身内になりゃそのうち覚えるさ!」
がははは!!と笑う万助おじさん。(豪快だなぁ……)
「で、おばあちゃん、その人は?」
夏希先輩が興味津々に聞いている。多分オレのことだろうと予測する。
「名字名前さんだよ。私の知り合いの子で夏希の一つ下だ。仲良くしておやり」
知り合いの子とはよく考えたな、おばあちゃん。まぁ、知り合い多いから疑問なんてないと思う。
「私、篠原夏希、よろしくね!」
『よろしくお願いします。えっと……夏希先輩』
「敬語も先輩もいらないよー」
『じゃあ夏希姉で』
それもいらないよー、と口を尖らせる夏希姉。可愛いんだけど一応先輩だから。
一コ上だから。
暫くして、夏希姉から「お風呂、先入っちゃって」とのことで、お先に、と居間を後にした。
さっぱりして台所近くを歩いていると、聖美さんがご飯やらをおぼんに乗せて運んでいた。
『聖美さん。それ、どうしたんですか?』
「ああ、これ?ウチの佳主馬のご飯。持っていこうと思ってね」
『それ、オレが持っていきますよ。聖美さんは休んでください』
(佳主馬に会いに行くつもりだったし)おぼんを聖美さんから受け取る。
「そう?じゃあお願いしようかしら」
『はい、任せてください』
口実なんてなくても会いに行くけど。
(佳主馬、入るよ?)(……どうぞ)((あ、WINの文字。勝ったんだ)これ、ご飯)(そ。ありがと)
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