08
「……で?どうして納戸(ここ)にいたの?」
『あの、もう少し離れない?』
今の状況を説明すると、オレの背は棚に着いていて、前には佳主馬。逃げ場がない。距離にして20センチ程。(は、鼻血出そう……)さっきから『どいて』と言うが「嫌だ」の一点張り。佳主馬の体はオレの足の間。(これ、マジやばいって!)思わずドキドキする。相手は中学一年生。オレは高校二年生。(罪だって、佳主馬)
『話すから、この体勢はやめてくれないかな』
「……わかった。じゃあ名前さんはこのまま話してね」
『……は?』
佳主馬が後ろを向いたかと思えば、こてん、と背中から寄りかかってきた。(え、と……これは……?)つまり、足の間に佳主馬が体を預けて座っている状態。
『だ…抱きしめてもいいかな……?』
って、何て事を言ってるんだ、自分!!
「勝手にすれば?」
『え、いいの?』
「名前さんが全部話してくれるなら」
佳主馬に了承を得て、腰に手を回す。(うわ、ほっそ……)ふわりと鼻を掠める佳主馬の匂い。(……オレ、匂いフェチだから、これやばいわ)そして無防備に体を預けているとなれば、もう……(トリップできてよかった……!!神様ありがとう……ッ!)心からの感謝。
「で、どうしてここにいたの?」
オレは佳主馬に全て話した。納戸にトリップするまでの経過。そして、この世界が物語として映画になり、漫画となり、小説となり……。全て話し終えても、佳主馬はこの先の出来事を聞いてはこなかった。すると近づいてくる足音が聞こえてきた。
「あっ」
「……何か用?邪魔しないでくれる?」
「あっ……いや、ごめんっ」
今のは健二。え、オレトリップしたのって7月26日だったよね??
『佳主馬……今日何日?』
「……29日だけど。それがどうかしたの?」
二日間もズレがあるなんて。
(オレ来たのって26日のはず)(ズレてるね)(え、ええっ、え、オレ、ふっふっ、二日間も損したっ)(そっち?)
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