05
理由をどーのこーの言っても仕方無いから、結論を先に述べただけ。なのに、うん。ま、異世界から来ました、って言われて驚かない方が凄いか。(おばあちゃん、スゲー顔)
「佳主馬、お入り」
「うん」
(え、どーして佳主馬呼んじゃうかな)佳主馬はオレの隣に座る。距離にして数センチ。どうしてくれよう、コイツめ。ちょっと座ってるオレの隣にその距離で座るな。襲っちゃうよ。……なんて考えてるオレ。どうせこんなヤツですけど?
「佳主馬、名前さんについて何か聞いたかい?」
「何も聞いてない。後で全部話す、って。けど、女の人だってことは知ってる」
『……すみません、男装してるんです』
オレはウィッグを取り、元の髪に戻した。
「……っ」
佳主馬が息を呑んだのが分かった。
『地毛でして』
肩くらいまでの赤い髪。オレは赤は好きだけど、この髪はあまり好きじゃない。今までこの髪について色々言われた。だから、あまり人にだって見せたくない。今だって苦笑い。微笑むことだって出来やしない。だからあまり見ないで欲しい。
「お前さん、綺麗な髪じゃないか」
『……え…』
「赤い髪はお前さんの髪だろう?自信持っていいんだよ。」
『あ……』
今までは綺麗な髪だ、なんて言われたことはただの一度もなかった。「染めろ」だの「赤毛のアンじゃないんだから」とか。そんなことばっか。だからこの言葉には驚いた。
「男の子の恰好してるのだって、訳があるんだろう?だったらいいじゃないか、そのままのお前さんで」
『…………っ』
「名前さんは名前さんだよ」
いつでも。マンガの世界でだって、この人は欲しい言葉をいつもくれる。
嘘じゃない
(ありがとう……、ございます)(……佳主馬、連れておゆき。)(あのっ)(なんだい?)(また……来ても、いいですか……?)(もちろんさ)
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