03
「わかったから。言わないから。だから離して」
うん、佳主馬は流石オレの見込んだヤツ。普通はすぐ電話するのをしないでくれた。
(優しすぎるだろう、佳主馬!!)
知らぬ間に目は輝く。そして無意識のうちに抱きついていた。
(何このサイズ……っ!!んもー可愛すぎるだろう、佳主馬!!)
そして次の瞬間真っ赤に染まっていく佳主馬の顔。もう耳まで真っ赤だけど……。
「……離れてくれない?」
『え、何で。抱き心地最高なんですけど』
「そういう問題じゃなくて……当たってるんだけど。……っていうか……触ったっていうか…………」
もごもごと喋っていてよく聞こえない。(ん?当たってる?)ふと抱きついている体勢を見てみる。あ、そうか。佳主馬は前で手を構えてたから必然的に当たっちゃうわな、うん。仕方無く離れる。うん、残念。
『今の、頼むから内緒な!』
「おばあちゃんにだけでも言った方がいいよ」
『あー……、栄おばあちゃんかぁー』
栄さんの名前を出した途端、目を丸くする佳主馬。
「どーしてうちのおばあちゃん知ってるの」
ああ、そっか。オレ、ここに来た限り深く関われない。
『後で……全部話すよ』
苦笑いでしか返すことができない。
「……それよりさ、誰?」
『あー、申し遅れました、名字名前と言いまーす。よろしく、佳主馬!!』
……不法侵入だったよね、明らか。
(名前さんって男じゃないでしょ)(あれ、見逃してくれないワケ?)(そのことも言った方がいいと思うよ)(りょーかい、)
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