カタタタ。
13班の休憩室にキーボードを打つ音が響き渡る。
音の元を辿れば、休憩室に3個置かれたベッドの奥にフードを被った者がいた。靴を脱がずにベッドの上で胡座をかき、自前であろうノートパソコンを使っている。
「あぁ、かわいーなぁ」
ポツリと呟きながらキーボードを打つ指は止まらない。
顔もニヤニヤしているのを見れば、普通の人ならその光景に引いてしまうだろう。
「ふふふ……」
心なしか顔がほんのりと赤くなっている。
そんな危ない者がいる部屋にタイミング悪く…、かは分からないが丁度ドアを開けて入って来た者がいた。
「終わったー!」
明るい声を出しながら部屋に入って来たのはリーダーのサハラである。
任務を終わらせて帰って来たのだろう。
「おかえり、早かったね」
ノートパソコンから目を離さずに、その者はサハラに向けて声をかけた。
当たり前だがベッドが置かれている場所から出入口までは離れている。
入ってきたサハラがキョロキョロと辺りを見渡したのは言うまでもない。
だが、キーボードの打つ音に気付くとサハラは迷うことなく奥のベッドへ向かい顔を出した。
「まーた一人でパソコンゲームしてるなー、ダラン」
人が折角ドラゴンを倒しに行っていたというのに、こいつは全く…。
と、サハラは言いたげにその者…ダランを見る。
「別に良いじゃない。僕が何しようと勝手でしょ?」
ダランは何て事ないという風に返事をした。
目を画面から離さないままなので余計にムッとしてきたサハラは、何を思ったのかある行動を起こした。
「はい、ゲーム禁止な!」
バッとノートパソコンを引ったくって取り上げたではないか。
ダランは楽しみの邪魔をされたのに少し遅れて気付き、サハラを見上げた。
「あぁ、もう……今イイ所だったのに」
「そんなのセーブをすればいいだろ、セーブを」
ビシィとダランに指差しをするサハラ。
「ったく、一年前はこんな風じゃなかったってのに……」
一年前、と口にした。それは今でこそこんな風になってしまって知るものは少ないが、ダランは13班の中でも物凄く真面目だったのだ。
その真面目さ故に、壁にぶつかる事も多く結果性格がねじ曲がってしまった。
まぁ、今の彼にそんな事を言っても治す気はないのでこうしてサハラは行動に起こしている。
「まだそんな事言ってるのサハラは?」
「そりゃ言いたくなるさ」
見上げてくるダランを横目にノートパソコンの電源を落とそうと画面へ目を向けた時、サハラから小さな悲鳴が起きた。
ダランはそんなサハラを見て笑っている。
「な、な…な……っ!!!」
ノートパソコンを持つ手が震え、引きつった笑みでダランに目を向けた。
「こ、これ……っ!!」
「だから僕は言ったじゃないか、゙イイ所だっだのに、って…。あーあ、見られちゃったか……」
ダランには何のダメージもなくニヤニヤと笑っている。
それとは逆に、サハラは心のダメージが大きくなっていっているようだ。
それもその筈。
画面に映し出されているのはゲームではなく、何とサハラの盗撮写真だったのだ。フォルダーには、ズラーっと寝顔や着替え中の物や風呂場の物なんかもある。
中には合成された酷い写真があり思わずノートパソコンを投げていた。
勿論ガシャンと音を立ててノートパソコンはお陀仏になる。
そんな事はお構い無しにサハラはダランに盗撮された写真を問い詰めようと近寄れば、いつの間にか腰に回された手に気付くのが遅れてしまいダランの上に倒れてしまった。
「何するんだお前!と言うかあの写真は……っ」
「あの中には大事なデータがあったんだけど、責任取ってくれるよね…サハラ?」
「……っ?!」
そう言った後、ダランの顔がサハラに近付いたかと思えば戸惑いもなく口付けをしたではないか。
突然の事に驚いたサハラは体を退こうとするが、腰に回された力が強いのか上手くいかない。
「……んっ…、…ん゙ーーっ!!!」
抵抗する為ダランの胸をバシバシ叩けば更に口付けが深くなっていく。
「ん、んぅ……っ!!」
そのせいで段々と息苦しくなっていきサハラはもう駄目だと思い始めた時、漸く口付けから解放される。
思いっきり肩で息をしているサハラのその顔が真っ赤になっているのをダランは確認するなりこう言っていた。
もちろん、ニヤニヤしながら。
「んー、可愛いけどもうちょっとイイ声出せない?何かイマイチで……」
「……んの…、ばか野郎がっ!!!」
直後に顔面パンチを食らったのは言うまでもない。
(もっと恥ずかしがる顔が見たいのに)
*************
性格がねじ曲がって変態道へまっしぐら。
甘いって…一体…。
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