10秒間で伝えたいこと
予約の日はいつでもいい、と言われ予約した日が今日になった。
場所がわからないから連れていけとの事だったので、俺の仕事が休みの日に。
「鹿野さん、そろそろ行きますよ」
玄関を開けてそう告げる
俺も私服(いつも鹿野さんの家に行くときはスウェット)だが鹿野さんの私服なんて見たことない。
……ちゃんとした服なのだろうか、と内心不安だ。
鹿野さん、外見はあんなでぶっきらぼうだけど優しい人なのに。
もったいないよななんか色々。
「鹿野さぁん」
「洗面所にいんだよ、上がってろ」
…洗面所。
髭でもそってんのかなぁ、んなことあり得なさそうだけど
ははは、と一人で想像して笑いながらたたみに座る
何気なしに周りを見渡してみる。もちろん俺が掃除してるから綺麗なのだけれど。
…なんか物減った?
ちょっとそう思うが、まあ気にすることもないな。と思ってぼーとする。
テレビをつけてみたがこの時間帯ニュースばっかだ。
ニュースが『佐々木組の組員であった宍戸氏を逮捕』とか言ってる。あ、ヤクザか、と思いながらチャンネルをかえた
それにしても鹿野さんと外出は初めてだな
ちょっと楽しみにしてた自分がいる
まあ社会人になって、友人と会う機会もないし、遊んでる余裕もないから俺自身も久々の自由時間となるのだけれど。
「お待たせ」
「あー、いえい…………え」
やってきた鹿野さんの声に顔あげた途端、体が固まった
……………はい?
「なんだその顔。」
いつものようにダルそうにしている鹿野さんの立ち姿が、全く別物に見える今
ポカーンと口を開けているに違いない俺を見て鹿野さんが顔をしかめた
いや、でも、
「……は?」
気づいたら、もう一度疑問詞が口からこぼれでた 。
い、ったい、
「ど、どうしたんですか!」
「なにがだよ」
いやいや自分が一番よくわかってるくせに!
目の前の男はいつものだらしない格好ではなく、髪を一つにくくって、前髪を横に流してさっぱりした人物で。
髭がない、ということもあるが、その顔の整いぶりに度肝を抜いた
……つまりとんでもないイケメンだった。
誰だこの人。
「か、鹿野さん?」
「なんで疑問形なんだよ。俺じゃない奴が俺の家にいたらビビるだろうが」
「そ、そうなんですけど」
う…え、
うわぁ、まじかよ。
詐欺にあっていた気分だ
「あの余裕はそういうことか…」
「ああ?」
「いや…」
やれば出来る、って。
やらなくても出来ると思いますよ、あなたの顔だったら。
いつぞやの言葉を反復してしみじみ思う。
そうしていたら、鹿野さんがハハ、と笑った
「ああ、俺のイケメンぶりにビビってんのか。みんなそうなる」
「…鹿野さんらしい言い種ですね。」
でも、そんなこと言っても自慢に聞こえない。
ほど、彼は美形だった。
ハーフの俺よりもずっと男らしい顔つき
今までよれよれした服だったのに、今日はちゃんとした服で、まるでモデルが着ている服のように眩しい。
「絶対俺霞んで見られる…」
「お前なんだかんだ言ってちょっとナルシ入ってんのな」
「ナルシじゃないです!」
俺だって男だから、多少女性の視線とかは気になるもので。
あぁ、私服ももっと決めてくればよかった。
身長も体格も鹿野さんに負けてるし。
足なが。
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