恋はもう溶けている | ナノ
07





!!?



「………ン゛ンッ!?」

「色気ないな……もっと可愛い声だせよ童貞」


チュプ、と童貞はあまり聞くことがないであろう厭らしい音が自分の口許からして頭が沸騰した

い、今、おれ、雫にキスされてね?ね?ね?
ピシリと固まった俺を、好機と見たのか雫はまた唇を重ねてくる

んぁっ!?


「まっ、ひふふ、はんへっ(しずく、なんで)」

「んー?そういう気分?…口開けろ」

「へっ、……んっ…」


言われたまま口を開いたらヌルリと舌が入ってきた
しっ、雫の舌がっ…!


逃げる俺の舌を無理矢理絡ませてくる雫
口の中のチョコがその熱で溶けていってじんわりと甘さが広がっていく
雫もその甘さに顔を微かにしかめたが止めるつもりはないらしい。


聞いたことのない水音とか、粘着音とかが、余計俺の顔を赤くさせた
エッロ…い!



「っはっ…、ン……ッ」

「…はは、下手くそ。俺全然気持ちよくないんだけど」

「い、息できないっ…」

「鼻で息して」


苦しそうに浅く呼吸してる俺は無視なんだね雫くん
は、鼻で息、
てか、気持ちよくって!?キスで気持ちよくなれるの!?
お、俺、考えてみたらこんな舌の絡ませ合いしたことないかも…


「……ン」


恐る恐る俺も雫みたいに舌を動かすと雫が微かに笑った
あ、これで良いんだ…?


キスが激しくなるにつれて雫が強く押さえている手首がだんだん緩んでく


俺、逃げるなら今だぞ



「ン……ふ…んンッ」



だというのに、俺も意地になって舌を絡ませてる
どうした俺。

快感のせいか、酸欠のせいか、クラクラした頭ではこの異常な光景も理解できなくなっていて

ただもっと気持ちよくなりたくて、必死に頭を持ち上げて雫の唇を貪っていた


悔しいけど、気持ち良い



「……はっ……偲…」


熱っぽい俺を呼ぶ雫の声
俺を拘束してた手をはがして、今度は頭を鷲掴んできた

荒っぽい。髪引っ張るなよ
でも、なんか、妙に嬉しいのはなんでだ


気づいたら、俺も雫の顔に手を添えている
体は0距離。隙間なんてない


もう、ナニコレ

俺ら何やってんの


こんな呼吸を荒くしながらキスって、まるで恋人同士じゃん
しかもすっげえ雫俺にがっついてるし
いや俺もだけどさ


雫の熱い指が俺のセーターに入ってきたときさすがに何かやばいんじゃないかと思った


けれど雫はなかなかキスをやめてくれそうになくて



どうすればいいんだろう
これに終わりはあるのか?



「……ぁ…ッ」


腰を何度も行き来して撫でる雫の手にピクリと反応すると、雫が笑う
わざと煽るような手付きだった


「………続ける?逃げる?」


これが最後の選択肢。


唇を離して俺の耳元で甘く囁く雫
その少し乱れた熱い吐息に俺はたぶん麻痺していたんだ


じゃなければ、俺は、きっと逃げるを選んでいた


雫の顎に添えていた手を雫の髪に埋めるとそれを答えと見なしたのか雫は俺の耳にキスをする


そして唇をつけたまま囁いた



「バレンタインデーで初めて貰った良いお菓子かも」


なんだよそれ
俺お菓子じゃねーし

てか『良い』の?お前さっき散々ブサイクとか色気ないとか言ったくせに



ああ、もうダメだ
意味わからない



雫の甘い声と言葉によって、

俺の意思も思考も何もかもがドロドロに溶けてしまった。










prev next