恋はもう溶けている | ナノ
06




「ちょ、ほんとに、ギブ」

「まだあるんだけど。ほら、あーん」

「それ何個目だと思ってんだよ」

「知らねーよ」


平らげていけば平らげていくほど増えていくのは満腹感
俺はもう胃の中がチョコとかクッキーとかなんか甘いもので満ちててヤバイ。つかさっき酒入ったチョコあったから余計気持ち悪い


そして、気づいたら雫の優しさは消えていた
顎を固定され無理矢理口を開かされてチョコを投入させられる

ワンコ蕎麦もといワンコチョコみたいになってんぞ



「お前の優しさはどこいった!?」


コーヒーを喉に流しながらそれをたずねる
もう無理マジ無理帰ろうかな


「え?何いってんだよ偲。優しさに満ちてるだろ?」

「この俺の顎を掴んでる手は何」

「偲をじっくり見るために固定してる手」

「言い訳はもういい!」


こいつ絶対途中から俺のいやがる顔を見て楽しんでたよ
つかお前ほとんど食べてねーじゃん


「言い訳じゃねーよ。お前おでこ広いな」

「うるせえ!」


本当にじっくり見始めたから抵抗するが偲がほとんど俺にのしかかってる状態だから動けない

確かに俺はでこが広い
だから絶対前髪をあげたくないのに、こいつあげやがった!


「しかも無駄に肌綺麗だし。女みたい」

「そうだな、ちゃんとスキンケアしてるからな」

「必死だね」


フッと笑う偲
てか、顔、近い、あと重い
なにをそんなじっくり見てるんだよ
つかお前顔赤くね。チョコの酒のせい?

雫の指が俺のおでこを滑る


「あ」

「なに!?」


今度はなんだ



「おでこにチョコついちゃった」

「は!?ふざけんな!」

「ごめんごめん」


ティッシュどこだ、

俺はキョロキョロと周りを見渡すが雫が動こうとしない
いや拭くくらいしろよ


「おい、雫ー・・・・・うぎゃっ!?」


突然おでこにヌルリとした生暖かい感触がして体が思いきり反応した
なっ、なにいまの!?


驚いて見上げると、数ミリのところに綺麗な雫の顔
下手したらキスしそうな距離に慌てる


お、おぼばばばばっ!?



「な、なななに、」


ち、近いし!なにいまの、ぬるって、
今のって、まさか、


ズザッと後ずさると、雫が爆笑してた


「すっげー顔真っ赤。」

「お、おまえ、性格悪い……っ」


俺の反応見るためにわざと舐めたのかっ!?潔癖性はどこいった!お前ドアノブ回すときも嫌そうな顔してるのに!

雫の行動にカァアアと熱が顔に集まる


「ふは、童貞らしい反応」

「ぶっ殺すぞ!」


実際そうだからなにも言えない
童貞じゃなかったらどんな反応してたんだろう、こんな照れない?
おふざけにしてはひどすぎる!
てか、雫はなんでそんな飄々としてんだよその余裕そうな面はなに?!

あばば、と唇を震わしていると、ニヤりと嫌な顔で笑う雫
そして、のしっと俺に乗っかってきた


「!?」


膝立ちで俺を見下ろす雫は、なんだかやけに色っぽい
くそ…別にやっぱイケメンだなとか思ってねえし…!

動けないでいる俺の代わりに雫が口を開いた


「ねえ、偲」

「ぁ、な、なに…」


端整な顔が近くにきて、自然と弱々しい声になった
こいつの目、相手の動き封じ込める力でもある訳?ねえ、俺息止まってない大丈夫?


「バレンタインデーなのにお世話になってる俺には何もないの?まさかね。」

「・・・。」


・・・やばい。何もない。



意地悪く微笑む雫に固まる

と、とりあえず、どけてくんねぇかな、


「ごめん、俺、何もないんだけど……ってか、ちょっとどいて…」


雫の胸板を押すとその手も捕らえられた
ひぇっ!?

そのまま体を倒され、何故か押し倒されている状態に
ゴツンッと床に頭を打ったがそれどころじゃない

な、なななんだどうした雫!



「………はぁー……ほんと色気のねぇ顔。唇とか、全然そそらないね」

「突然なんの話だてめぇ!お前に言われると腹立つな!」


そんなげんなりした顔で言うな!!

俺なんかお前のその美形っぷりに動けねえよ!早くどけよ!



「はい、生意気な口効いた偲くんにバツゲーム」

「えっ!?……むぐっ」



ば、バツゲーム!?
怪しく笑った雫に口のなかにチョコを詰められた
腕を両方固定されてるため抵抗することができない

その甘さに顔をしかめていると雫の視線とぶつかる

ドキ、なんて可愛いもんじゃない。これは蛇に睨まれた蛙ってヤツで、ギクとビクとドキを足して三で割ったような感じ

スルリ、と手首を押さえていた雫の手の感触にビクリと体が跳ねた


「………ねえ、偲、俺ってもしかして今結構ヤバイ?」


俺が怯えてることに気づいたのか、軽く目を伏せながらそう呟く雫。
ええ、ヤバイですよ。俺恐ろしくてたまりません


口にチョコが入っててうまく喋れない俺は思いっきり首を縦にふる

すると、それを見た雫は口許を歪めた


「なんだ。元気そうだからいいや。残念だったね偲逃げるチャンスだったのに」

「…ふぇっ!?」



同時に唇に強い圧迫感を感じて、咄嗟に目を瞑れば熱い何かが俺の唇に触れた




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